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42.田舎に帰ろう!(4)

「んで、アミちゃんはどこの出身なんだ? 地元が近かったら、盆休み中も場所を決めて会えるんじゃないの」 「それが残念な事に、アミちゃんはこっちの子なんよなぁ。連絡はナンボでもつくけど、会えへんのだけは辛いのう」 「まぁそうだな。気持ちはわかるよ」  俺もミオも、離れ離れになったらきっと気が気じゃなくなって耐えられないと思うから、この場合においてのみ、佐藤の心情は察するに余りある。  俺はアミちゃんがどういう人か知らないから悪く言うつもりはないけど、佐藤にとっては、ひょっとしたら盆休み中に他の男と……という不安が頭をよぎっているのかも知れない。  よく言われる、「女心と秋の空」という(ことわざ)をこの状況で持ち出すのが適切かどうかは分からないが、俺の元カノはまさにそういう人物だったしなぁ。  ……いや。さすがに、あの女とアミちゃんを同列にして考えるのは失礼か。 「さ、休憩はこの辺にして、そろそろ仕事に戻るとするわ。柚月も早よ残業終わらせな、ミオちゃんが心配するで」 「ああ。コーヒー、ありがとな」  これから片付けないといけない書類の事で頭がいっぱいになっているのか、佐藤は無言で苦笑いを作り、手を上げて返事をした。  よく考えると、あいつも不憫だよな。  こっちに付き合えるか否かの瀬戸際にいる女性を残し、ひとり大阪に帰省しなくちゃいけないんだから。  職場から田舎までが遠い人は、早めに飛行機なり、新幹線なりのチケットを取らないと帰省がままならないわけで、佐藤がアミちゃんと知り合ったのは、ちょうどそういう微妙な時期だったのだろう。  かような事情を鑑みると、職場と同じ県に田舎がある俺は、かなり恵まれている方なんだよな。  交通費も安くつくし。  とは言え、実家までは、最寄りの高速道路を一時間半飛ばした後、下道をおよそ三十分走らないと着かないところにあるから、さほど楽というわけではない。  渋滞するかも知れないし。  移動時間中、助手席でじっと座り続けるミオに、何とか退屈させないような工夫を考える必要があるだろうな。  残業を終わらせて退社したら、商店街のおもちゃ屋にでも寄ってみるか。

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