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42.田舎に帰ろう!(7)

「ねぇお兄ちゃん。今、お話してもいい?」  空腹を満たすべく、急ピッチで飯をかっ込む俺をにこやかに眺めていたミオが、突如として口を開いた。 「もちろんいいよ。今日は、何が聞きたいのかな」 「えっと。聞きたいのはお兄ちゃんの実家の事なんだけど、車で行くくらい遠いところにあるんだよね」 「ああ、そうだよ。山が多くてのどかなところなんだ。……そういや車で思い出したけど、お盆休みは道が渋滞するかも知れないし、明後日はちょっと早く出かけた方がよさそうだな」 「じゃあ、夜中の三時くらいにお家を出た方がいいのかな?」 「え! いやいや、そこまで早くしなくてもいいと思うよ。高速道路の混み具合にもよるけど、二、三時間もあったら、実家には着くからさ」 「そうなんだ。それくらいなら、車の中でお兄ちゃんとお話してればあっという間だねー」  ミオは、車でドライブするのがよほど好きらしい。たくさんお喋りができるし、車窓からもまだ見ぬ景色が楽しめるという事で、今からでもワクワクが止まらないようだ。 「ねね、お兄ちゃん。お兄ちゃんの実家には、お父さんとお母さんが住んでるんだよね。どんな人なの?」 「うーん? まぁ一言で表すなら、親父は不器用、お袋が世話好きってところだな」 「不器用?」 「うん。普段は寡黙……というか、あまり喋らなくてさ。とにかく感情を顔に出さないんだよね。たぶん、喜怒哀楽の表現が苦手なんだと思うけど」 「そうなんだ。ボクとは正反対の人だねー」  そう言ってミオは、グラスに注がれた、冷やっこい麦茶に口をつける。  確かに正反対かも知れないなぁ。何しろミオは天真爛漫な性格で、表情がくるくる変わるもんだから、親父に比べて感情が豊かな方だと思う。  そんなミオと親父が出会ったら、一体どんな言葉が交わされるのか、興味深くはある。 「で、お袋は独り身の俺を心配して、玉ねぎを送ってきてくれたり、お見合いの相手を紹介してくるんだけどさ」 「お見合いってなぁに?」 「そうだなぁ。お見合いってのは平たく言うと、結婚願望のある二人を引き合わせる事、でいいのかな」 「んん? よく分かんないけど、お兄ちゃんのお母さんは、結婚したがってる女の人を、お兄ちゃんに紹介してるの?」 「うん、それで合ってるよ。でも、一度として深い関係にはなれなかったんだけどね」  という返事を聞いたミオは、さも意外なりという表情を見せた。

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