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42.田舎に帰ろう!(9)
「ちょっと話が逸れたけど、とにかくうちのお袋は、面倒見のいい性格だって事だね」
「ふーん。じゃあお兄ちゃん、きっとお母さんに似たんだね」
「ん? そうか?」
「うん。だってお兄ちゃん、ずっと施設にいたボクを迎えに来てくれたでしょ?」
「ああ、なるほど。それに関しては確かに、母親譲りなのかも知れないね」
とは言ったものの、仮にあの児童養護施設に足を運んだ時、再びミオと出逢わなかったら、果たして同じ行動を採ったかというと、いささか疑問が残る。
……いや。あの日偶然、ミオと四年ぶりの再会を果たし、我が家に迎え入れる決心をしたのは、きっと二人を結ぶ運命の糸がたぐり寄せられたからなのだろう。あの時の出逢いは必然だったんだ。
そんな俺の決意に諸手を挙げて賛同してくれた両親は、一日でも早く、ミオに会いたいと思っているらしい。何しろ、自分たちにとって、ミオは初孫という事になるんだからな。
「ところでミオ、実家に帰る準備は進んでる?」
「進んでるよー。お昼の間に、着替えの服とショーツは全部リュックに入れちゃった。まだなのは、日記帳とウサちゃんだけだよ」
「そっか。ウサちゃんも一緒に連れていきたいもんな」
「うん」
我が家におけるウサちゃんとは、ウサギだけを飼育している動物園のおみやげで買った、垂れ耳が特徴的なウサギのぬいぐるみの事である。
あのウサちゃんは、俺たちにとっては今や家族も同然だし、ミオに至っては、時には二人の子供として、毎日かわいがるほど大切にしている。
そんなウサちゃんを、帰省の二日前からリュックに詰めておくのは心苦しいのだろう。こういう気遣いこそが、ミオの心優しさを裏付けているんだよな。
ウサちゃんの話はそれでいいとして、俺が今気にしているのは、ミオがいつも穿いているショーツの事なんだが……。
ミオの性別が男の子だという事は、親父とお袋も重々承知している。それだけに、なぜ女の子ものの下着を穿いているのか? という疑問は、当然抱くことになるだろう。
特にお袋は同じ女性、いや、ミオはショタっ娘だから正確には違うのだが、とにかくショーツの特徴を見れば、それが男女どちらの物かはすぐに言い当てられる。
ミオが我が家同様、実家においても、お風呂上がりでショーツ一枚の姿になるのは容易に想像がつく。
万が一、その姿を両親に見られなかったとしても、洗濯物を干す時にバレるだろうから、結局は時間の問題だよなぁ。
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