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43.ロングドライブの果てに(4)

「お待たせいたしました。こちら、鴨南蛮そばになります」 「あ、どうも。ありがとうございます」  うーむ。やっぱりこのお店は、注文を受けてから、出来上がるまでの時間がやたら早い。まるでファーストフードのようだ。  まぁ早かろうが並だろうが、飯がうまけりゃ、個人的にはどっちでもいいんだけれども。 「えーとな。ゴールデンウィークは、四月の終わりから五月の頭くらいまで休んでいい日なんだよ。仕事も、学校もね」 「ふーん、そうなんだ。でも、どうしてゴールデンって名前が付いてるの?」  俺がご当地グルメである鴨南蛮そばをすすっている間にも、知的探究心に満ち溢れたミオは、矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。 「その言葉の意味を考えた事はなかったな。大型連休で嬉しいからとか、そういう単純な理由でないのは分かるけど、うーむ」 「ゴールデンって英語でしょ? 確か〝黄金〟って意味だよね」 「そうだね。で、ウィークは訳すと〝週間〟になる」 「週間?」 「うん。例えば『ワンウィーク』って言葉は、一週間って意味になるんだ」 「へぇー。じゃあ、ゴールデンとウィークをくっ付けたら『黄金週間』になるの? 何だか変な英語だね」  正確には日本語の訳し方がおかしいのだろうが、とにかく違和感が拭えないミオは、ナイフとフォークを動かす手を止め、首をひねって考え込み始めてしまった。 「まあまあ、言葉なんてそんなもんさ。で、黄金週間って名前になった理由だけど、確かラジオが関係していたような覚えがあるんだ」 「ラジオ?」 「そう。俺が人から聞いた話によると、(くだん)の大型連休中は、なぜかラジオの聴取率が良かったらしいよ」 「んん? ラジオが黄金? チョウシュリツ?」  いかん! 突然、ラジオならではの専門的な用語が飛び込んできた事で、ミオの頭の中がこんがらがりつつあるらしい。 「ごめん、言葉が足りなかったよ。聴取率っていうのは、ラジオを聴いた人の割合を示す数字なんだ」 「えっと。それって、テレビの視聴率みたいな感じの?」 「うん、その視聴率のラジオ版だね」 「じゃあ、ゴールデンウィークの間は、たくさんの人がラジオを聴いてたって事?」 「ラジオ発祥の話を信じるならそういう事だな。テレビと同じで、皆がよく聴く時間をゴールデンタイムって言うんだけど、名前はそこから来たって説があるのさ」

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