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43.ロングドライブの果てに(8)
「そうだ! せっかくミオが見つけてくれたんだし、これの大きいやつを買っていこうか。親父たちへのみやげ物と、俺たちも食べられるおやつも兼ねてさ」
「いいの? お兄ちゃん。無理してない?」
「はは、大丈夫だよ。ミオはほんとに優しいね」
俺はそう言って、申し訳無さそうに見上げてきたミオを安心させるべく、頭を撫でる。
そのスキンシップで少しは気が楽になったのか、ミオは自分が抱きしめている腕にそっと頬を寄せ、消え入りそうな声で「ありがとう」とささやいた。
はぁ、何て奥ゆかしい子なんだ。まだ十歳という若さで、恋人を気遣う心優しさを持っているんだから、彼氏である俺も鼻が高いよ。
という事で、ミオが見つけてくれた『ミィちゃんまんじゅう』の、二十四個入りをお買い上げだ。
試食はしなかったから味は分からないが、饅頭の中には、小豆のこし餡 とカスタードクリームが詰められているらしい。
いかに一口サイズとは言えども、これくらいの物量があれば、皆たくさん食べられる事だろう。
さすがはショタっ娘ちゃんの〝かわいいものセンサー〟だ。ミオがいてくれたおかげで、あれこれ悩む事なく、スムーズに買い物ができたよ。
「さてさて。実家へのおみやげも確保できたし、今度は渋滞の情報を調べに行こうか」
「うん。渋滞が少なくなってるといいねー」
このサービスエリアには、レストランの他に、簡単な食事のできるフードコートがある。
おそらく、最も人通りが多いのがここなのだろう。たくさんの人の目に付きやすいよう、壁にはドでかいモニターが取り付けられている。
そのモニターで逐次更新されるのが、今から調べようとしている交通情報だ。各路線の工事や、あるいは事故などによる渋滞の有無が、これさえ見ればひと目で分かる。
「わぁー。大きなテレビだね」
「な。これには他の高速道路の情報も載せているから、大きな画面じゃないと見づらいんだろうね」
「なるほどー。それで、ボクたちが今いるのってどこなのかな?」
「ええと。この赤く伸びている縦線が、今いる高速道路だな」
俺が指し示した路線には、ナントカ自動車道という名称が書かれ、渋滞の状況がハッキリ分かるよう、赤く色付けされている。
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