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43.ロングドライブの果てに(9)
「ねぇねぇ。この赤いのってなぁに?」
「これは渋滞の長さを表しているんだろうね。赤が渋滞、青が通常、あるいは順調。要するに、道が空いているって事だな」
「ふんふん」
「で、今俺たちがいるサービスエリアが、赤線の真ん中くらいだから、あと半分も走れば、渋滞から抜け出せるんだと思うよ」
ただ、その半分の渋滞を徐行運転のごとくノロノロ進むハメになったら、抜け出した頃には、日が暮れてしまってそうな気もするんだよな。
去年はこんなに混まなかったというのに、果たして皆は、この高速道路を走って、一体どこへ向かおうとしているのか。
「なるほどー。お休みの日は、いつもこんな風に真っ赤っかになるのかな?」
「たぶん……ね」
テレビや雑誌だと、月曜日が祝日に振り替えられた場合は、三連休をしきりにアピールして、各地のお出かけスポットを紹介するのだが、俺はあんまり気乗りしないんだよなぁ。
その連休を利用して車を飛ばそうにも、やっぱり今日みたいな混雑が起きるのは想像に難くないわけだし。
だから俺は、ミオとお泊まりデートをする時は、道が空いていて、宿泊翌日も、丸一日休みが取れる余裕があるくらいの連休を確保する事にしているのだ。
まぁ今回の帰省はデートじゃなくて、柚月家のご先祖様をお迎えするためなんだけれども。
「さて。他にやり残した事が無かったら、これ以上道が混み出す前に、出発するとしようか」
「うん。じゃあ、おトイレにだけ行ってきてもいい?」
「もちろんいいよ。俺も出入り口で待ってるから、行っておいで」
「はぁーい。行ってきまーす」
トイレに向かうミオの背中を見送った後、待ち時間を利用して、スマートフォンで簡単な調べ物をしていると、ふいに呼び出し音が鳴ってビックリした。
こんな時に、一体誰からの電話なんだ?
まさか、会社からの業務連絡じゃないだろうな。
連休前の仕事は全部片付けたし、入念にチェックをしたから、記入漏れや計算間違いのようなミスは無いと思うのだが、緊急の用事が出来て、人手が足りないから戻って来いとか?
だとしたら最悪だな。ここまで来ておいて、わざわざ反対車線に乗って引き返す事になるんだから。
嫌な予感を抱きつつ、画面に表示される発信者の名前を確認する。と、そこには、柚月慶子 という文字が浮かんでいた。
なんだ、誰かと思えば俺のお袋じゃないか。
お袋も渋滞情報をテレビか何かで見て、心配になって電話をかけてきたのかな?
とりあえず現状の報告はしておきたいし、チャッチャと電話に出て話をすることにしよう。
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