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43.ロングドライブの果てに(12)
冷房でひんやりとしたサービスエリアの建物を出ると、待ってましたとばかりに、ムワッとした熱気が俺たちの体を包み込んだ。
「うへ、あっついなぁ。夏だから仕方ないけど、こんなムシムシしたところに長時間いたら、体が干からびちゃうよ」
「うんうん。お兄ちゃん、ボクよりも厚着だもんね」
ミオはこう言っているが、正確には、俺が厚着というよりも、ミオが薄着すぎるんだよなぁ。
頭にはラフィアで作られたフリンジハットを被り、上はタンクトップ一枚。下は、丈の短いショートパンツを穿き、これでもかというくらい、生足を露出させている、うちのショタっ娘ちゃん。
ミオ基準で比較するならば、半袖のポロシャツとジーンズ姿の俺が厚着に見えるのは、まぁ仕方のない事なのか。
実家に帰ったら、俺も、ミオ程ではないにしろ、それなりの薄着で過ごさせてもらおう。
*
「お? ちょっとは車の流れがよくなってきたぞ」
「ほんとだー。あんまり混まなくなってきたね」
サービスエリアを出てからおよそ一時間ほど走っただろうか。二十キロあった渋滞もやや解消され、車間距離が大きく空き、一般道路並のスピードを出せるようになってきた。
「この調子なら、あと三十分もあれば下道に降りられそうだな。とは言っても、そこから実家までが、また長いんだけどさ」
「そうなの?」
「うん。家が遠いのもあるけど、下道は高速道路に比べて直線が少ないし、法定速度も遅く設定してあるだろ。そこへ来て信号もあるから、思ったようにスイスイ進めないんだよ」
「でも、三時ごろには着けそうなんだ?」
「この渋滞がいつまで続くかによるけど、それでもせいぜい、三時から二、三十分前後するくらいの誤差で着くと思うよ」
「……そっか」
俺がざっくりと計算した到着時間の予測を聞いたミオは、ゆっくりうつむきながら、ポツリとつぶやいた。
いかに運転中だとはいえ、その感情の移り変わりに気付かないほど、俺は鈍感ではない。
きっとこの子は、俺の実家へお泊まりするのが近づくにつれ、いろんな感情が入り乱れてきて、その結果として、不安という負の感情が勝ち残ったのだろう。
そりゃそうだよな。実家で待っているのがいかに俺の親父やお袋だからといっても、今のミオにとっては結局他人でしかない。
自らが捨て子にされ、大人を信じられなくなったミオが、同じ大人である、俺の両親と普通に会話ができるのだろうか、心配で仕方ないのだと思う。
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