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43.ロングドライブの果てに(13)
それについては、先日、同僚の佐藤が言ったように、俺が間に入って双方の潤滑剤となり、お互いの歯車を噛み合わせるべく、尽力する必要がある。
あ。そういや、さっきお袋から電話があった事を話してなかったな。じゃあここで、ミオの歯車に、潤滑液を一滴垂らしておきますか。
「なぁミオ」
「ん? なぁに? お兄ちゃん」
「実はさ、さっきのサービスエリアでミオがお手洗いに行ってる間に、お袋から電話があったんだ」
「そうなの?」
「うん。『もう着いたか』とか、『今日中に帰ってこれそうなのか』なんて、言ってることが極端だからまいったよ」
「あはは。きっと、お兄ちゃんが待ち遠しいんだね」
「俺だけじゃないさ。お袋はかわいいミオの、元気な声を聞きたがっていたよ」
「ボク……の?」
「そう。実家にはミオの写真しか送っていなかったからね、今日は二人で帰るって言ってるのに、それも待ちきれなくて、お喋りがしたくて電話をかけてきたのさ」
「んー。それは嬉しいけど、ボク、何を喋ったら良いのか分かんないよ?」
ミオが困ったような顔で俺の方を向く。
「はは。そんなの気にしなくていいんだよ。単純に『ただいま』とか、軽い自己紹介をしただけで、お袋の方が、根掘り葉掘り聞いてくるだろうから」
「ネホリハホリ……?」
また小難しい慣用句が出てきた事で、ミオが腕を組み、首を傾げて考え込み始めた。
ネホリハホリとは、ロールプレイングゲームの魔法じゃあ少なくともないのだが、言葉と行動が一致しなければ、どういう意味なのか分からないのも、致し方ない事なのだろう。
「まぁ簡単に言うと、ミオの事についていろんな事を聞いてくるって意味だな。学校は楽しい? とか、普段は何をして遊んでいるの? なんて調子でね」
「そうなんだ! でも遊びって何だろ。お家でなら、ウサちゃんを抱っこしてテレビを見るとかだけど。それも入る?」
「良いんじゃない? それから、俺が胡座 かいて座っていると、その中に入ってきて、まんまるになって甘えるやつとか」
という話を聞いたミオが、舌をペロッと出して、申し訳無さそうに笑ってみせた。心を許した人の膝に乗ったり、かいた胡座の中に潜り込んだりするのは、家猫ちゃんがよくやる行動なんだよな。
うちのミオはれっきとした人間だが、子猫系のショタっ娘であるので、甘え方が似てくるのは至極真っ当な本能なのだろう。たぶん。
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