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43.ロングドライブの果てに(14)

「とにかく、家に帰っても気を遣ったり、遠慮とかはしなくていいからね。万が一ミオが緊張するかもしれない時は、俺がずっと側にいてあげるからさ」 「うん、分かったよー。ありがとね、お兄ちゃん」  ミオの弾みがついた返事を聞くに、どうやらこの子の不安を少しは取り除けたようだ。  少なくとも、自分の膝の上で抱っこしている、ウサちゃんのぬいぐるみをナデナデするくらいの余裕はできたらしい。  ミオの心のケアは何とかうまくいったから良いとして、目下の問題はこの道路渋滞なんだよな。  いかに一般道並の速度は出せるようになったとは言え、こうも単調な道をロングドライブすると、さすがに眠くなってきちゃうよ。  ……いや、いかんいかん。万が一居眠り運転でもして、大事故を起こしたら、実家に帰るどころの話じゃなくなる。  俺一人で車に乗るならまだしも、自分の命よりも大切なミオを隣に座らせているのだ。気をしっかり張って、安全運転に務めなければ。 「ねぇお兄ちゃん。聞いてもいい?」 「ああ、構わないよ。何を聞きたいのかな」 「えっと。ボクたちって、高速道路のどこから降りるの?」 「簡単に説明すると、高速道路の脇にある、ぐるぐる巻きの道でスピードを充分に落として、それから下道に合流するんだよ」 「そうなんだ。そのぐるぐる巻きって、ここからどのくらい先にあるの?」 「結構走ったから、もうすぐのはずなんだけどな。左側の、緑色の標識に何か書いてないかい?」  俺の話を聞くやいなや、ミオはウサちゃんを太ももの上に置き、窓に両手をついて、外の景色に目を凝らし始めた。 「……んーとね。あ、『咲真(さくま) 出口』って書いてある看板が見えてきたよ」 「お。ミオ、咲真が読めたかぁ。偉い偉い」 「そんなにすごくないよー。同じクラスの子に咲真くんって子がいるだけだもん」  ミオは特に我が知識をひけらかすでもなく、あっさりと難しい漢字を読めた事の、タネ明かしをするのだった。  そうやって自分を飾らないで、自然体でいるところが、ミオの魅力の一つでもあるんだよな。 「咲真のかんば、いや、標識が見えてきたって事は、もうそろそろ高速道路は終わりだな」 「そうなの?」 「うん。咲真は実家に一番近い下り口だからね。で、この高速道路を下りたら、今度は一般道を走って実家まで向かうんだよ」

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