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44.子猫と大型犬(7)
「で、だ。お盆休みになると、亡くなったご先祖様をお迎えするために、家族とか親戚が一堂に会するんだけど」
「義弘、それじゃ分からないでしょ」
いかん。多少難しい慣用句を用いて、お袋にダメ出しを食らってしまった。
「えーと、そうだな。すごく簡単に言っちゃうと、親戚が多い人たちは、一番年上のおじさん、おばさん家に集まって、行事を執り行う場合が多いんだ。それが毎年のお盆ってわけ」
「なるほどー。でも、どうしてお盆休みに、お庭のお仕事が増えるの?」
「それはまぁ……見栄というか、見映えをよくしておかないと、集まってきた親戚の人たちに示しがつかない、みたいな理由じゃないかね」
「見栄? なぁに? それ」
ダメだ! 今のフレーズは確実にミスチョイスだった。ミオくらいの歳の子に、見栄を張りたがる大人の虚栄心を説明しても、てんで意味が分からないだろう。
よくよく考えたら、単純に見栄なんて考えていないケースもあるわけだから、今の言葉を訂正するなら、果たして何と言い換えるのが適切なのか。
「ごめんねミオちゃん。義弘はあんまりうまく説明できないみたいだから、お祖母ちゃんが代わりに教えてあげるわね」
見栄という言葉をどうごまかし、無かった事にしようか必死で思案していたら、お袋が助け舟を出してきた。
「お庭の中にはね、池を作ったり、木を植えたり、大きな石を置いて、作り上げた自然を見て楽しむものもあるのよ。ここまでは大丈夫?」
「うん」
「でも、そんなに広いお庭だと、お家の人だけで作るのはすごく大変なの。だからそういう時に、庭師さんに仕事を頼んで、お庭を綺麗にしてもらうのよ」
「じゃあ、庭師さんは、お盆にお庭を作ってるってこと?」
「お盆前にお仕事が来るのは、すでにある庭のお手入れのためが多いわね。木の枝が伸びたから切って整えてもらったり、庭の砂利石とか土を均 したりするの。お盆にはたくさんの人が集まるから、見た目を美しくしておきたいのよ」
「あ。それがお兄ちゃんが言った、『見映えをよくしておかないと』ってことなんだね」
お袋による助け舟のおかげでミオは全てを理解したらしく、顔がパッと明るくなった。
さすがは母親。手塩にかけ、俺という息子を育ててきただけあって、ナゼナニに対する答えを子供目線に合わせて説明するのが上手で、非常に分かりやすい。
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