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44.子猫と大型犬(8)

「で、親父は結局、八時くらいまでは仕事するのかな。夏は日が長いし」 「さすがにそこまで根を詰めてやらないわよ。七時すぎには帰って来れるんじゃない? お父さんも、早くミオちゃんに会いたいだろうし」 「そっか。じゃあ腹も満たした事だし、お次はお仏壇で手を合わせて、それからひと休みしようかな」 「ねぇお兄ちゃん。ボクもお仏壇に行ってもいい?」 「もちろんだよ、ありがとな。かわいいミオが来てくれたら、きっとご先祖様も喜ぶよ」  実家に帰って早々、甘い香りに誘われておやつタイムを優先してしまったので、ごめんなさいの意味も込めて、仏壇のある和室へと向かった。 「わ。見てお兄ちゃん、模様の描かれた電気スタンドが回ってるよー」 「はは、盆提灯を知らないと、電気スタンドに見えちゃうよな」 「ボンチョウチン?」 「うん。ご先祖様とか、ここ数年の間に亡くなった親族の霊が、道に迷ったりしないで帰ってこれるように、この提灯に光をともしておくのさ。それともう一つ、ご先祖様がここからあの世まで、無事に帰れるようにするための送り火って意味合いもあるんだけど」 「そうなんだ。青い光とお花の絵がくるくる回ってて、すごく綺麗だね……」  二歳の時に、親に捨てられたミオにとっては、家族や親族に会いたくても会えないので、盆提灯を見るのは、これが初めてとなる。  そんなミオが、俺の横にちょこんと座って一緒に手を合わせ、柚月家のご先祖様をお迎えしてくれているのだ。  全く血筋が異なる柚月家のために、ここまでしてくれて、嬉しく思わないわけがない。 「お兄ちゃん、ボク、手の合わせ方を間違えてない?」 「間違えてないよ、ミオ。ありがとう」  手を合わせ終えた俺は、一緒にご先祖様のお迎えをしてくれたミオの頭をポンポンして、感謝の気持ちを示した。 「――さて。ひとまずやる事はやったし、今日は久しぶりの渋滞でちょっと疲れちゃったから、晩飯の時間まで一休みさせてもらおうかな」 「車、いっぱい並んでたもんね」 「ミオはどうする? 一緒に昼寝しよっか?」 「うん! ボクも、お兄ちゃんと一緒にお昼寝するぅー」  ご先祖様のお迎えを終えた俺たちは、再度居間へと戻るや、テレビの前で寝っ転がり、放送中の情報番組を子守唄代わりにして、英気を養うべく昼寝を始めた。

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