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44.子猫と大型犬(9)

 昼寝だけのために、わざわざ二階への階段を上って、自分の部屋へ行くのはさすがに面倒くさい。  だから、居間にあるクッションを枕代わりにして、適度に室温調節された室内で寝ようと思ったのである。  ミオはテレビから背を向け、俺の胸板に頬を寄せて、まるで添い寝をするように横になった。 「あら? ミオちゃんはどこに行ったの?」  我が息子の、リビングで寝る癖をよく知っているお袋は、俺たちが寝冷えしないよう、タオルケットを持ってきてくれたのだが、俺の背中で死角になっているのか、ミオの居場所が分からないらしい。 「ここだよ。ほら」  俺が上体をねじって死角を消し、お袋にミオの姿を見せると、お袋の顔が一気にほころんだ。 「あらぁ、ミオちゃんったら、そんなにくっついちゃって。甘えんぼうさんなのねぇ」 「ミオとは普段からこんな感じだよ。家にいる時は、いつも一緒にいるって約束したからね」  なんて会話を交わしている間に、俺の腕に抱かれたミオは、いつの間にかスヤスヤと寝息をたてて眠っていた。  無理もない話だな。生まれて初めて高速道路の渋滞に巻き込まれ、その結果、助手席に長時間座って体を固定されていたんだから、心身ともに疲労が溜まったんだろう。  ごめんな、ミオ。たくさん寝て、夜になったらまた遊ぼうね。 「こうして見ると、あんたたちは犬猫にそっくりね」  と、お袋が、ミオを起こさないよう声を殺して話す。 「犬猫? どっちがどっち?」 「そりゃもちろん、ミオちゃんが猫よ。元気いっぱいで人懐っこくて、甘えんぼうな子猫ちゃん」 「じゃあ犬は俺なんだ?」 「ええ、それも大型犬だわ。こないだテレビで見たのよ。懐に潜って甘えてくる子猫ちゃんに、体を動かして寝床を作ってあげる、ラブラドールのワンちゃんをね」 「寝床かぁ。確かに、今日みたいなケースはこれまでに何度もあったし、当てはまる部分しかないな」 「義弘は背も高いから、大型犬の中でも、おっとりしてて優しいワンちゃんって感じだわね」  そう言えば、こないだ行ったデパート内のペットショップで、俺は猫好き、ミオは犬好きって話をしたっけ。  俺たちがこうして惹かれ合い、恋人同士になったのも、お互いが好きな動物に似ていたから、ってのも一因としてあるのかなぁ。

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