456 / 832
44.子猫と大型犬(9)
昼寝だけのために、わざわざ二階への階段を上って、自分の部屋へ行くのはさすがに面倒くさい。
だから、居間にあるクッションを枕代わりにして、適度に室温調節された室内で寝ようと思ったのである。
ミオはテレビから背を向け、俺の胸板に頬を寄せて、まるで添い寝をするように横になった。
「あら? ミオちゃんはどこに行ったの?」
我が息子の、リビングで寝る癖をよく知っているお袋は、俺たちが寝冷えしないよう、タオルケットを持ってきてくれたのだが、俺の背中で死角になっているのか、ミオの居場所が分からないらしい。
「ここだよ。ほら」
俺が上体をねじって死角を消し、お袋にミオの姿を見せると、お袋の顔が一気にほころんだ。
「あらぁ、ミオちゃんったら、そんなにくっついちゃって。甘えんぼうさんなのねぇ」
「ミオとは普段からこんな感じだよ。家にいる時は、いつも一緒にいるって約束したからね」
なんて会話を交わしている間に、俺の腕に抱かれたミオは、いつの間にかスヤスヤと寝息をたてて眠っていた。
無理もない話だな。生まれて初めて高速道路の渋滞に巻き込まれ、その結果、助手席に長時間座って体を固定されていたんだから、心身ともに疲労が溜まったんだろう。
ごめんな、ミオ。たくさん寝て、夜になったらまた遊ぼうね。
「こうして見ると、あんたたちは犬猫にそっくりね」
と、お袋が、ミオを起こさないよう声を殺して話す。
「犬猫? どっちがどっち?」
「そりゃもちろん、ミオちゃんが猫よ。元気いっぱいで人懐っこくて、甘えんぼうな子猫ちゃん」
「じゃあ犬は俺なんだ?」
「ええ、それも大型犬だわ。こないだテレビで見たのよ。懐に潜って甘えてくる子猫ちゃんに、体を動かして寝床を作ってあげる、ラブラドールのワンちゃんをね」
「寝床かぁ。確かに、今日みたいなケースはこれまでに何度もあったし、当てはまる部分しかないな」
「義弘は背も高いから、大型犬の中でも、おっとりしてて優しいワンちゃんって感じだわね」
そう言えば、こないだ行ったデパート内のペットショップで、俺は猫好き、ミオは犬好きって話をしたっけ。
俺たちがこうして惹かれ合い、恋人同士になったのも、お互いが好きな動物に似ていたから、ってのも一因としてあるのかなぁ。
ともだちにシェアしよう!