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44.子猫と大型犬(10)

「ところで義弘。お母さん、ミオちゃんの寝顔を撮りたいんだけど、なかなかいい角度が見つからないわね」  いつの間にかスマートフォンを持ってきていたお袋が、かわいい孫のベストショットが撮れるアングルを見つけるべく、俺の背後をうろつきながら、あれこれ試行錯誤している。  お袋、ほんとにミオの事がかわいくて仕方ないんだろうな。 「まぁまぁ、今はいいじゃない。その代わり、こないだ泊まったホテルで撮ったミオの寝顔を、後で送ってあげるからさ」 「じゃあその写真、明日の朝までにちょうだいね。明日はカメラ屋さんに寄った時に現像して、アルバムに挟んでおくから」  どうせなら、滞在中に撮りまくった写真をまとめて現像した方がいいんじゃないの? と思ったが、たぶん街のどこかに寄る用事のついでに、一刻も早くミオのキュートな寝顔を形にして取っておきたいのだろう。  ――さて。話もまとまったことだし、晩ご飯か、あるいは親父が仕事から帰ってくる時間まで、俺もしばしの昼寝を満喫させてもらうとするか。  あまり感情をあらわにしない親父だけど、ミオと初対面したら、一体どんな反応を示すんだろうな。  俺がミオを我が家に迎え入れるって話を電話でした時は、「そうか。分かった」のただ一言だけだったんだが、少なくとも、反対の立場ではないと思う。  実物のミオを見ると、親父の感情に何らかの変化が出てきたりするんだろうか。  こういうのは、第一印象が大事だよな。いきなり「俺の恋人です」って紹介するわけにもいかないし、やはりミオは、俺の子供として顔見せしたほうがいいだろう。  ただ、いつかは愛し合っている二人の関係を明かすべき時が来るわけだから、覚悟は決めておかなくちゃな。  天使のようなミオの寝顔で癒やされながら、あらゆる展開を想像してはみたが、結局なるようにしかならない。悪い結果ばかりを考えても、仕方がないということ。  今はとにかく、ロングドライブでクタクタになった体を休め、夜に向けて英気を養わせてもらおう。  久方ぶりとなる実家での晩ご飯、果たして何が出てくるのか、今から楽しみだな。

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