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45.一家団欒(2)
「ところで親父は? そろそろ帰ってきそう?」
「あなたたちが寝てる間に、お母さんの携帯に電話をかけてきたから、もうじきじゃないかしら」
「そうなんだ。仕事、思ったより早く片付いたんだな」
「きっとお父さんも、かわいい孫に会いたくて仕方ないのよ。口にこそ出さないけど、ミオちゃんの写真を眺めてはニコニコしてるんだから」
「ボクの写真?」
お袋との会話を聞いていたミオが、何やら不思議そうな顔をしている。たぶん、写真を撮ってもらった記憶はあるが、それがいつお袋たちの手元に渡ったのか、その手段の見当がつかないのだろう。
「えーとな。スマートフォンで取った写真はね、スマートフォン同士で送ったり、貰ったりできるんだよ。で、お袋は俺から貰ったミオの写真を現像してアルバムに挟んで、宝物にしているってわけさ」
「そうなんだ。すまーとふぉんって便利なんだねー」
感心するミオを微笑ましく見ながら、お袋は晩ご飯の準備を進める。さすがに寿司だけでは腹が膨れないと思ったのか、あらかじめ汁物やサラダも作り置きしていたようだ。
お袋には悪いけど、やっぱり実家は楽だなぁ。いつもは商店街で惣菜を買って帰り、インスタントの味噌汁を人数分用意していたのだが、実家にいれば、その手間が丸々省けるのだから。
「お寿司と煮麺 、それからカボチャの煮物に、サラダと納豆。あなたたち、これで足りるかしら」
「豪勢だなぁ。それだけあれば、充分腹が膨れると思うよ」
「あらそう。ところでミオちゃん、納豆は平気?」
「うん、大好きだよー。でも辛子だけは苦手だから、いつもお兄ちゃんに取ってもらってるの」
「あらそうなの? じゃあ、やっぱりお寿司も、わさびをよけてから食べた方がいいかも知れないわね」
「え。わさびってそんなに辛いの?」
「まぁ分量によるけど、鼻がツーンとするくらい辛いのを多めにのっけてたら、食べられない、というか、ネタの味が分かんなくなるかもだな」
「ふーん、そんなに辛いんだね。でも、どうしてそんなにたくさんわさびを乗せるの?」
こういう反応と発言を見聞きするに、どうやらミオは生まれてこの方、わさびを食した事がないらしい。
「そうだなぁ。わさびには殺菌作用があるから、食あたりの予防に……って意味で乗っけている場合もあるけど、単純にネタとの組み合わせを味わいたいから、みたいな人のために多めにしてあるのかもね」
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