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45.一家団欒(4)
気を利かせてくれたミオが、二階への階段を上り始めたのを見て、お袋が食卓に並ぶ椅子に腰をかける。
俺がその対面に座ったのを皮切りに、お袋は怪訝 そうな顔でこう切り出した。
「義弘 。あんた、ミオちゃんに女の子の下着を穿かせてるの?」
「いきなり直球を放ってくるなぁ、そんなんじゃないって。確かにミオはショーツを穿いてるけど、あくまで自分の意思でそうしてるんだよ」
「ほんと? 実はあんたの趣味だった、なんて事はないでしょうね」
「……あのさ、お袋。俺が万が一、その場しのぎで適当こいたとしても、ミオに直接確認を取ったら一発でバレるだろ」
俺が呆れ顔で否定したのがよほど効いたのか、お袋の表情が一気に緩んだ。
どうやら俺への疑念は晴れたみたいだが、これで親父が帰ってきたら、またイチから同じ説明をしなくちゃならないのか?
この件に関してミオを責めるつもりは毛頭ないし、責められるいわれもないのだが、保護者である俺が濡れ衣を着せられる事ほど、面倒なものはない。
「でも不思議ねぇ。確かにミオちゃんは美形の女顔だけど、男の子でしょ?」
「あの子は、基本的にかわいいものが好きなんだよ。機能性に長けたブリーフと、動物のイラストがプリントされたショーツなら、ミオが後者を選ぶのは明らかだろ」
「じゃあ、動物のイラストがプリントされたブリーフだったら?」
「どんだけブリーフを穿かせたいんだよ。俺の子供時代とは違って、今は男女兼用のショーツも普通にあるんだから、ブリーフにこだわる理由はないでしょうよ」
「えー? 男女兼用があるの? 時代も変わったのねぇ」
目を丸くして聞き返す様を見るに、どうやら、下着にもユニセックスの波が来ている事を、ほんとに知らなかったらしい。
これが俗に言う、ジェネレーションギャップというものか。
比較的、理解度が高いと思っていたお袋でこれなんだから、より頭の固い親父がミオのショーツ姿を見たら、一体どうなってしまうのだろう。
かく言う俺も、初めてミオがショーツ一枚で俺の前に立っていた時は相当慌てふためいたから、現代のファッション事情を得意げに語れる立場ではないんだけれども。
「それで? ミオちゃんはどんなのを穿いてるの?」
「やけに興味津々だなぁ。俺も日常的にまじまじと見たりはしないから詳しくは知らないんだけど、一番のお気に入りは水色で、小さなリボンがついてるやつだってさ」
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