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45.一家団欒(5)
「あらまぁ。それって女の子用じゃなくて?」
「うん。少なくとも、あれに関しては女の子用で間違いないね。とにかく服とか下着は、ミオが児童養護施設にいたころから、自分でチョイスしてきたらしい」
「ふぅん、そうだったの。昔から、中性的な男の子に女装させる親の話を耳にした事はあったけど、ミオちゃんの場合は自らなのね」
「そういう事。と言っても、ミオは女装しているつもりじゃあないんだけどね。衣服においても、純粋にかわいいものを好んでいるだけだからさ」
という、俺の説明だけではまだ釈然としない部分が残っているのか、お袋が複雑そうな顔をする。
まぁ、すぐには受け入れがたいよな。何しろ俺ですら、未だにミオがパンツ一丁となった姿にドキッとして、まともに直視できないんだから。
だからといって、下着を男ものに変えろなどと言うつもりは毛頭ない。個人の好みは千差万別、十人十色、みんな違ってみんな良い。俺はそう思うのである。
花も恥らう可憐なショタっ娘ちゃんが、たまたまショーツを自分の下着に選んだだけであって、何らかの罪に問われるような、悪い事をしたわけじゃあないんだから。
「お兄ちゃん、お着替えのバッグ持ってきたよー」
俺とお袋が話し込んでいるうちに、ミオは二人分の下着が詰まったバッグを両手に抱えながら、居間へと戻ってきた。
「ありがとう。それじゃ一緒にお風呂入ろっか」
「うん! また背中の洗いっこしようね」
「ミオちゃん、お風呂でパパの背中を流してるの? 偉いわねぇ」
「んー? お兄ちゃんはボクのパパじゃないよ、お兄ちゃんだよー」
というミオの返事を聞いて、また頭の上に疑問符が浮かんだお袋のために、俺がすかさず説明を挟む。
「あっと。お袋たちにはこの話してなかったね、ごめん。俺はミオの養育里親を申し出たんだけど、養子縁組をしたわけじゃないんだ。何と言うかほら、年もそう離れてはないからさ」
「あら、そうだったの? 十七歳離れてるって聞いてたから、お母さんはてっきり、あなたたちが親子になったものだと思ってたんだけど。でもまぁ、世の中にはもっと大きな年の差のきょうだいがいるから、その人たちと比べれば、確かにお兄ちゃんでもいいわね」
昨今の下着事情はともかくとして、二人の関係について抱いた疑問は氷解したらしく、お袋はすぐ元の和やかな顔に戻った。
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