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45.一家団欒(16)

 そう考えると、真実を知った後、第一声でミオに「ありがとう」を伝えたお袋は、相当肝が据わっているというか、理解しようと努力する事にしたのか、そのどちらかだと思う。 「お袋、ごめん。こういう大切な事は、やっぱり直接会ってから話した方がいいと思っていたんだけど、いざとなると、勇気が出なくって……」 「何言ってるの。あんたはちゃんと、お母さんに全部話してくれたじゃない。それはミオちゃんを守るために、勇気を出したからこそなのよ。もっと胸を張りなさい」  かつて俺は、会社の上司に、とある話を聞かせてもらった事がある。 「いいか柚月、覚えときな。母親ってのはな、何があっても我が子を守ってくれるんだ。お袋さんを大切にするんだぜ」  この話は、ミオを捨て子にするような育児拒否だとか、人の道を外した親不孝者などの極端な例は除くかも知れない。  その上で、自分がお腹を痛めて産んだ子供を信じ、そして味方しようと思うのは、母親として当たり前に働く心理なのだろう。  それを母性と呼ぶのかどうかは分からない。ただ、お袋はいつも、不器用な俺を励まし、勇気づけてくれた。ミオと付き合っている。そう告白した今でさえも――。  だから上司がしてくれた話は、きっと本当の事なのだと思う。  これまでは、ミオに恋愛の多様性について語りつつも、いざ付き合い始めると、自分に自信が持てなくなった。  そんな俺の背中を、お袋は力強く押してくれたんだ。 「あなたたちの話を聞いて、ウサギちゃんが二人の子供だという意味が分かったわ。お父さんには、後でわたしの方から話しておくから」 「その必要はないぞ、母ちゃん」  という声が聞こえる方を向くと、そこでは、風呂上がりだと見られる親父が下着姿で、居間から廊下へ続く通路の狭間に立っていた。 「お……親父、いつからそこに!?」 「母ちゃんの声が大きくなってきた時からだよ。何事かと思って、早めに風呂を済ませたんだ。腹を空かせた皆を待たせるのも悪いしな」  つまり親父は、俺とミオが恋仲で、いずれ結婚するという話を、俺たちから死角となる、壁にもたれて聞いていた事になるのか。 「ごめんなさいお父さん。わたしが動揺したばっかりに……」 「いや、俺がもっと早く話をするべきだったんだ。隠し事をするつもりはなかったけど、つい――」 「二人とも、もう何も言わんでいい」

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