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45.一家団欒(17)

 反省の弁を述べようとする俺とお袋に対し、親父は右手を突き出して制した。 「義弘は養育里親を経て、ミオくんという最高のパートナーを見つけたんだ。柚月家として、こんなにめでたい日はそうそう無いだろう。だから今日は皆で、二人の事をお祝いしようじゃないか」  さすがは柚月家の家長。理解の早さもさることながら、鶴の一声と言うのか、とにかく言葉のひとつひとつに、強い説得力がある。  息子である俺に足りないのは、親父のように、予想外の事実を知っても何ら動じない、その肝っ玉の強さだろう。  俺も親父を見習って、そのカラフルなステテコ姿で家中をうろつけば、少しは度胸がつくのかなぁ。 「ミオくん、申し訳なかったね。晩飯の後でかまわないから、良かったら、お祖父ちゃんにもウサちゃんを見せてくれるかい?」 「……うん! ありがとう、お祖父ちゃん」  ミオは俺の彼女で、かつ将来の結婚相手だという事は分かったけど、親父はそれでもなお、自分の事をお祖父ちゃんと呼んだ。  たぶん親父の中ではミオのことを、息子の婚約者であると同時に、かわいい初孫として歓迎したい思いがあるのだろう。  ウサちゃんの写真が発端で、お袋に問い詰められた時はどうなることかと思ったが、何とか丸く収まってよかった。  親父とお袋に、俺たち二人が結婚を前提にお付き合いしているのを咎められ、無理やり別れさせられないよう、どのように訴えかければ認めてもらえるのか。これはかねてからの懸案事項だった。  なかなかいい案が出なくて、頭の中で何度もシミュレーションを繰り返しては、夢にまでその場面が出てくるほどうなされていたんだが、今では肩の荷も下りて、とても晴れやかな気持ちだ。  以前から練っていた計画では、実家に帰省した際に、俺とミオが恋人同士として愛し合っている事をそれとなく匂わせつつ、徐々に明かしていくつもりだったのだが、ウサちゃんの写真がきっかけで、外堀を埋める事も叶わず計画は瓦解した。  でも、それが逆に良い方へ作用する事もある。実際に、ミオを守るために勇気を振り絞って、包み隠さず全てを打ち明けたからこそ、親父とお袋は、俺たちを祝福してくれたんだ。

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