475 / 821

45.一家団欒(18)

「さぁさ。皆が揃って、お話も済んだ事だし、さっそく晩ご飯にしましょ。おいしいお寿司が待ってるわよ」 「なぁ母ちゃん、今日の晩酌は瓶ビールいいだろ? せっかくのお祝いなんだからさ」 「あら、お父さんったら。そんな調子のいい事言って。今日はミオちゃんを酔わせるつもりなのかしら」 「ま、まさか、そこは義弘だろ。なぁ義弘、あっちでは、少しは飲んでるんじゃないのか?」 「え? 俺は酔いが回るの早いから、たまーに、ちっこい缶ビールを飲むくらいだよ。ミオがジュースと間違って飲んだら大変だし、冷蔵庫にお酒は置かないんだ」  俺がそう答えながら、ミオを抱き上げて膝の上に座らせた事で、ちょうど二人の視線が合ったのか、親父の顔が、みるみるうちにほころんでいく。  どうやら親父は、天使のようなミオの愛らしさの前では、自慢のポーカーフェイスを維持し切れないらしい。 「そうか。じゃあ、無理に勧めるわけにはいかないな」 「いや、飲ませてもらうよ。今日はめでたい日だし、仕事も休みだからね」 「よし、じゃあ母ちゃん、晩酌は量が多い瓶ビールで決定だな」 「まぁ! これなんだから。良かったわねお父さん、義弘という、いい口実ができて」  お袋は苦笑いを浮かべつつも、冷蔵庫でキンキンに冷やされた瓶ビールと、栓抜きをテーブルに運んでくる。 「ミオくんはジュースがいいかな? いろいろあるよ。お中元で貰ったフルーツジュースとか」 「んーと。ボク、今日はお祖母ちゃんが作ってくれた麦茶がいいなぁ」 「あらあら、そんなに気に入ってくれたの? お祖母ちゃん、嬉しくなっちゃうわ」  まだ幼いミオのことだから、晩飯のお供にはりんごジュースを選ぶのかと思ったが、よほどお袋の作った、味と香りが濃厚な麦茶を気に入ったらしい。  重大な話を終え、各々が食卓を囲む椅子に座るやいなや、親父はさっそく、よく冷えた瓶ビールの栓を抜き、自分と俺のグラスに注ぎ始めた。 「やっぱり仕事終わりの一杯はビールだよなぁ。ほら義弘、乾杯だ」 「ん、乾杯? お疲れ様のってこと?」 「お前も今日は長い時間、車を運転して疲れたろ。それと、ミオくんとの前途を祝して。こっちの方がめでたいから、ぜひ乾杯しとかないとな」 「はは、ありがと。でもそういう意味の乾杯なら、お袋とミオも一緒がいいんじゃない?」 「言われてみりゃそうだな。今日は柚月家にとってめでたい日だし、皆で乾杯しよう」

ともだちにシェアしよう!