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45.一家団欒(25)
遊べる本数、個数が多い花火セットは、いかにミオが楽しみにしていたとて、一人だけで遊ばせるのも味気ない。だから親父は、きっと俺にも遊んで欲しくて、たくさん買ってきてくれたんだろう。
とある人が、エッセイに「いくつになっても、親にとって、我が子はかわいい子供のまま」と書いていた。
そんな、かわいい我が子の一人息子を喜ばせたくて、親父は気を利かせ、俺とミオが楽しい思い出を作れるよう、花火という最高のおもちゃを買ってきてくれたんだ。
その愛情に心を揺さぶられた俺は、嬉しさで胸がいっぱいになって、目頭にじわりと涙がにじんだのだった。
こんなに優しい親父がいてくれて、息子の俺は、ほんとに幸せ者だよ。
「お父さん。義弘の分も合わせたら、結構な量の花火になりそうだし、二日に分けて遊んだらいいんじゃない?」
「え? いや……しかし、義弘たちは明日帰るんだろ? あまり遅くまで引き止めるのもな」
「あら、いけない。お父さんにはいつ帰るかの話をしてなかったわね」
親父が差し出したお椀に、煮麺のお代わりを注ごうとしたお袋が、一旦その手を止める。
「何だ? 母ちゃん。義弘とミオくんが、ここにいられる日数が変わったのか?」
「ええ。実はね、帰ってきた義弘たちとおやつを食べてる時に、わたしがもう一泊してってお願いしたのよ」
「はは。『お願い』って言うと少し大げさだけど、確かにすぐ帰るのもなって思って、もう一日ゆっくりさせてもらうことにしたんだ」
「そうだったのか。母ちゃん、無理に引き止めてないだろうな?」
「いやいや、むしろ俺がせっかちすぎたんだよ。ミオは日記以外の、夏休みの宿題を終わらせてるし、会社の休暇も長いから、そんなに急 いて帰る必要が無いって思っただけさ」
なんて話をしながら思ったんだけど、俺がミオと暮らすマンションも我が家だし、実家も俺たちにとっては故郷 なので、どっちにも「帰る」という言葉を使う。これが実にややこしい。
こういう場合、マンションへ帰る話をする時は、「戻る」と言い換えた方が区別をつけやすそうだ。
「ごちそうさまでした! ご飯、すごくおいしかったよー」
初めての寿司に温かい煮麺、大好きなカボチャの煮物など、お袋が用意した豪勢な晩ご飯をひと通り食べ終えたミオが、元気よく手を合わせる。
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