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45.一家団欒(26)
「ミオちゃん、もういいの? カボチャの煮物、まだお代わりがあるわよ」
「うん。今日はもうお腹いっぱい食べたから、また明日……ん?」
「どうしたんだい? ミオ」
「えっと。カボチャの煮物が、明日になっても食べられるのかな? って思って」
「ああ。賞味期限というか、要は煮物が傷んだりしないか、その事を気にしてるんだね」
ミオが心配そうな顔をしながら、俺の問いに対して小さく頷いた。
俺が仕事帰りでよく通う、スーパーや惣菜屋さんなどで売っている煮物には、パッケージのいずこかに、必ず賞味期限、あるいは消費期限が明記してある。
言うまでもないくらい当たり前の事なのだが、出来合いの惣菜を買って食する上で知っておきたいのは、目安となる消費期限以内に食べてしまえば、食あたりのリスクを心配しなくて済むという事だ。
で、この場合、ミオは自分がお代わりの遠慮をしたせいで、明日には煮物が傷み、食べられなくなってしまうのではないか? という危惧を抱いているのだろう。
「お袋。煮物は今日作ったの?」
「そうよ。夏だから、お鍋はそのままにしておけないけど、容器に移して冷蔵庫で保存しておけば、短く見積もっても四日は持つわね」
「と、いう事だよ。ミオ。お腹いっぱいなら無理しなくていいからね」
「うん、ありがと。ごめんねお祖母ちゃん」
「謝らなくていいのよ。お祖母ちゃんの方こそ、ミオちゃんに気を遣わせちゃって、ごめんなさいね」
こういう二人のやり取りを見ていると、俺が入社一年目で、初の帰省をした時の事を思い出すなぁ。
お袋は自分の息子に腹いっぱい食べさせたくて、大盛りできるくらいのおかずを作るんだけど、俺は俺で、あまり食費をかけさせたくないもんだから、ついつい遠慮してしまっていた。
今思えば、その遠慮は「親の心、子知らず」だったのかも知れない。
今日の花火の件といい、心優しい親父とお袋に恵まれて育った俺は、とてつもない幸せ者だったんだな。
この幸せを、辛い生い立ちを背負って育ったミオにも、できるだけたくさん分け与えてあげられればいいんだけど。
「よし。うまい飯で腹も膨れたことだし、お次は買ってきた花火セットで遊ぶとするか」
二杯目の煮麺を早々に食べ終え、満足げに腹をさする親父が手元に引き寄せた、商売道具の詰め込まれた大きなバッグ。
そのバッグのジッパーを開け、中から取りい出したるのが、『国産大容量! 極上バラエティ花火』という名の花火セットだった。
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