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46.花火で遊ぼう!(22)

「あ。ほんとだー。ヘビ花火、にょろーんと伸びてくね」 「だろ? そのにょろーんの原理は俺もよく知らないんだけど、コールタールピッチを原材料にして、いろいろ手を加えたら、ヘビみたいに伸びる花火が出来上がったらしいよ」 「え? こーる……何?」 「コールタールピッチね。難しい説明は省くけど、要は蒸留した石炭の残りカス、ってとこかな」 「あんまりよく分かんないけど、石炭の残りカスが花火になるの?」 「そうだよ。残りカスといっても悪い意味じゃなくて、ヘビ花火の材料以外として、物がサビたり腐ったり、水の侵入を防ぐための塗料にも使われるんだってさ」 「ふーん。コールタールってすごいんだね」  顎に指を当て、何かを考え込む仕草を見せた現代っ子のミオには、石炭と聞いても、その姿形がピンと来ないのかも知れない。  石炭の原料を極端に分かりやすく説明すると、はるか遠い昔、腐り切らず地中に堆積した植物の死骸が、地圧や地熱によって固められて出来たもので、かつては蒸気機関車や、火力発電などの燃料として重宝されていた。  しかし、今の電車に石炭は必要ないし、火力発電も天然ガスを使う割合が多くなっているため、現代の日本において、最も石炭を使用するのは製鉄所だという話だ。  もっとも今、そんな小難しい石炭事情を、うちの子猫ちゃんの頭に叩き込ませる必要はないだろう。ここは教室じゃなくて実家の庭なわけで、火が点いて燃えるヘビ花火の動きを楽しんでくれれば、それが一番の収獲なのだから。 「にょろにょろ! ねぇお兄ちゃん」 「ん? 何だい?」 「これって花火なの?」  ミオは燃え尽きたヘビ花火を横目に、つとめて冷静なトーンで、至極もっともな疑問をぶつけてくる。  スイカを食べる前に遊んでいた手持ち花火は、色とりどりの火薬が吹き出る様に驚き、目を輝かせて喜んでいたものの、ヘビ花火に関しては、終始、これ以上ないくらいの真顔だった。 「うーん……そう言われると、俺も確固たる根拠を持っているわけじゃあないんだけど、火を点けて変化するのを楽しむおもちゃという意味では、やっぱり花火の仲間なんじゃない?」 「そうなの? でもこれが、よそでは猫の落とし物って名前で売ってるんでしょ。ボク、ずっと見てたけど、別に何も落としてないよね」 「まぁ、そうだな。ただにょろーんと伸びただけだし」  実を言うと、「落とし物」は、お袋があえて遠回しに付けた名称で、本来の商品名はもっとストレートなんだけどな。

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