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46.花火で遊ぼう!(29)

 元カノに散々罵声を浴びせられ、ある程度耐性が付いた俺ならともかく、まだ幼くて、繊細なミオにこういう話を聞かれるのは、あまりよくない。  この子もいずれは通る道で、避けて通れない問題である事は、俺だって承知している。だけれど、それは今じゃなくてもいい。  四年という時を経て、ようやく実ったショタっ娘ちゃんの恋をぶち壊しにしようとする輩が現れたら、その時は俺が、そいつを全力でもって排除するつもりだ。  排除とは言っても、相手を脅迫するとか暴力に訴えるような、野蛮でイリーガルで荒々しい手段を用いたりはしない。  ただ、二度と俺たちに近寄ろうという考えを起こさなくなるような、厳しいペナルティを受けてもらう事にはなるだろう。 「さ、ミオ。どんな火花が噴き出すのか、火を点けて遊んでみようよ」 「うん。最初はフタを開けるんだよね?」  水平な地面に噴き出し花火を置いたミオは、慣れない手つきながら箱の上蓋を開け、中に収納されている導火線を引っ張り出した。 「ああ、そうそう。俺が子供の時に遊んだ花火もこんな感じだったな。徐々にではあるけど、昔の記憶が蘇ってきたよ」 「お兄ちゃん。これ、どうやって火を点けるの?」 「そうだなぁ。マッチ一本擦って着火してもいいんだけど、今日はちょっと風があるし、また、さっきのお線香を使うとするか」  俺はミオを安全な位置へ下がらせると、お袋が持ってきた線香の二本目に火を点け、燃焼する部分をそっと導火線に当てた。 「この花火は導火線が太いから、ちょっとコツが必要なんだ。こんな風に、満遍(まんべん)なく燃やしていけば……おっ、うまく火が点いたぞ」 「わぁ、ほんとだ。お兄ちゃん、花火で遊ぶのが上手なんだねー」 「はは。俺は、親父がやってくれてるのを見て覚えただけだよ。(ことわざ)で例えるなら、〝門前の小僧、習わぬ経を読む〟ってとこかな」 「んん? 『モンゼツのコゾー』?」 「なっ!?」 「悶絶」とは、要するに、(もだ)え苦しんで気を失う事を指すのだが、近年では、やらしい意味で使われる事がままある。  おそらく「悶える」、あるいは「身悶えする」という字面が、さぞかし性的に見えたからこその使い方なのだろうが、とんだ誤用だと言うしかない。  どっちにせよ、門前で小僧が悶え苦しんでいたら大事(おおごと)である。その有様を思い浮かべたらしい親父たちは、驚きのあまり立ち上がって、俺を問い詰めてきた。 「おい義弘、お前一体……」 「義弘! あんた、普段から何を教えてるのよ!」 「お、俺は何にも教えてないよ! 家じゃいつも、至極健全な生活をしてるんだから、たぶんテレビを見た影響だよー」

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