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46.花火で遊ぼう!(30)
「どうしたの? お兄ちゃん。ボク、また何か変なこと言っちゃった?」
小首を傾げて俺に尋ねてきた、ミオの不思議そうな表情を見るに、どうやらこの子は、悶絶の意味を知らずに使ったようである。
何かの機会でたまたま悶絶という言葉を耳にして、「門前」という耳慣れない単語を聞き間違えたか、あるいは何とか口述しようと思った結果、一番よく知っている「悶絶」が浮かんだのだろう。
大方、夏休みで暇つぶしにテレビを見て、昼メロあたりにチャンネルを合わせた際、偶然飛び出した単語が耳に残った結果ではないだろうか。
よって、俺は性的な事は何もしていないし教えてもいない。つまり無実だと断言できる。
イカ料理専門店探しの折、グラビアアイドルによるお宝サイトを見られてしまった時は、さすがに冷や汗をかいたものだが、あれも水着ありきで、健康な肉体美を楽しむものだからね。
「いや、大丈夫さ。〝門前〟を他の言葉と聞き間違いしちゃったんだろ? もう一度ゆっくりと言うけど、も・ん・ぜ・ん、なんだよ」
「あー! モンゼンなんだね! ボク、どこかで聞いた言葉で喋ったから、間違えちゃったぁ」
俺の指摘を受け、恥ずかしさで赤くなった頬を両手で覆い隠したミオの、その仕草がまた、初々しくてかわいい。
やっぱりというか案の定というか。今度は親父たちも見守る中で、思い浮かんだ言葉を即座に口にして俺を驚かせる、いつものミオの天然が顔を出したらしい。
ミオが自分で証言してくれなかったら、俺は今頃、親父たちによる、つるし上げを食らっていた事だろう。危ない危ない。
「ねぇお兄ちゃん。そろそろ、花火が噴き出しそうだよー」
「お、そっか。火薬に燃え移るまで、やたら時間がかかったな」
こういうおもちゃ花火も基本は手作りだから、導火線の長さや質、そして燃えやすさにも誤差が出るんだろうな。
俺はどこかで見た、花火職人の職場風景を思い浮かべながら、風上でかがみ込んで待機していたミオの隣に位置取り、そして腰を落とした。
「あ! 火花が出てきたよ!」
「おお。今時の噴き出し花火はこんな感じで火花を噴くのかぁ。進歩したなぁ」
導火線から引火した火薬は、徐々に勢いを強め、およそ二メートルほどの高さまで噴き上げていく。
俺たちが今見ている『真夏の黄昏』では、さまざまな色の火薬を用いているようで、基本的な柱となる黄金色 の火花とは別に仕込まれた、桃色、淡い青色、緑色などの火薬が小さな火球となって、周囲を鮮やかに照らしていった。
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