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46.花火で遊ぼう!(34)
実際のところ、お隣さんとの間には広い畑がある。距離にすると、その長さはおよそ二十メートル。
それだけ離れていれば、さすがに打ち上げ花火と言えども、おもちゃとして遊ぶそれの火薬量で、遠くまで破裂音が響き渡るかどうかは怪しいところだ。
つまり、今しがた親父の問いに答えた、お隣さんが云々という言い訳は、ミオとイチャついているのをごまかすため、咄嗟についた嘘なのである。
この状況で他の花火を探すつもりはハナからなかったし、親父たちに気付かれなければ、俺たちはもっと長く、二人だけの時間を過ごしていただろう。
咄嗟に俺たちが、暗がりにいる事を利用して、急場しのぎで適当こいたとこまではいいものの、その言動と行動が一致していないのが判明したら、いよいよ何をしているのか怪しまれてしまう。
なので俺は機転を利かせ、おもちゃ花火が詰まった袋を斜めに傾け、残っている全ての花火を滑り落とさせる事で、いかにも探しているかのようなアピールを試みた。
海外の映画を吹き替えで見る際、作中で「おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさ」という言い回しを使われる事がある。
果たして、うちの子猫ちゃんが気に入りそうな花火が、一体どれだけ残っているのか未知数だが、とにかくあの例え話を実行に移して、俺は袋をひっくり返してみたのである。
すると、まだまだ相当の数がある手持ち花火の中から、これまた定番で、遊びのシメに相応しい花火の束が、ミオの足元に転がってきた。
「ほぇ? お兄ちゃん、この細いのなぁに?」
「ああ、それは線香花火だよ」
「センコウハナビ?」
「うん。この花火の名前は、お線香の線香と同じ文字で書くんだ。これも手持ち花火の中では、かなり昔から親しまれてる部類だね」
「ふーん。じゃあ、これもヒラヒラに火を点けて遊べばいいの?」
「そっちは持ち手だから逆だな。線香花火の場合は、紙に包まれた、下のとがった赤い部分に点火させるんだよ」
「そうなんだ。お兄ちゃんに教えてもらわなかったら、ボク、間違えてヒラヒラの方を燃やしちゃうところだったよー」
「はは、無理もないな。実を言うとさ、俺も子供の頃、その間違いをやっちまった事があるんだよね」
「えー! それで、大丈夫だったの?」
ヒラヒラの付いた線香花火において、遊び方を間違え、反対側に着火してしまった経験は、笑い話になるほどよくある事だ。
だが、その笑い話を聞いたミオはいたって真剣で、目を丸くして驚くや否や、俺の右手を両手で優しく包み込み、ヤケドの痕が残ってやしないか、入念に調べ始めた。
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