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46.花火で遊ぼう!(44)
ただ、ミオは驚くほど聞き分けが良い子なので、よほど行き詰まった時に代案を出すことこそあれど、基本的に、俺の提案を却下したり、駄々をこねて嫌がったりする事はない。
その理由 は、彼氏の俺が言う事だから……というのが大前提だとは思うが、ミオが過ごしてきた児童養護施設において、一緒に生活してきた子供たちや、職員の人たちと話し合うにつれ、今のような人格が形成されていった部分もあるのだろう。
かように素直なショタっ娘ちゃんは、自らが率先して、地面に転がっていた、まだ遊んでいない花火をかき集めては袋に詰める作業を手伝い、大事そうに抱えて立ち上がった。
「ミオ、忘れ物はない?」
「ないよー。まだ遊べる花火は全部拾っちゃったし、えっと、他には……」
「大丈夫みたいだな。じゃあ、俺はろうそくの火を消して、バケツの中身も――」
「義弘。花火セットの片付けと後始末はおれがやっておくから、火薬の臭いが染み付く前に、ミオくんを連れて手を洗ってきなさい」
終始見守り役を務めていた親父がそう言って、外縁から腰を上げてこちらへ来るや、さり気なくミオの頭をポンポンし、その胸に抱えていた花火セットの袋を受け取った。
「ミオくん、今日は長旅で疲れたろ。寝る時間まで、居間でくつろいでおいで」
「うん、ありがとうお祖父ちゃん。花火、とっても楽しかったよー」
初孫のショタっ娘ちゃんから、弾けんばかりの笑顔を向けられた親父は、ミオならではの中性的を超えている、美少女のごとき端麗な顔立ちにすっかり魅せられたのだろう。今では鼻の下が、だらしないほどに伸び切っている。
喉から手が出るほど、ミオの寝顔が写っている写真を欲しがっていたお袋もお袋だけど、親父も相当だな。
里子だとは言えど、親父にとって、孫は孫。こんなにキュートで天真爛漫な性格のミオが、自分の事を祖父として慕ってくれた事によって、言葉では言い表せないほどの幸福感を得たのかも知れない。
「そうかそうか。ミオくんに喜んでもらえて、お祖父ちゃんも嬉しいよ。さ、夜風で体が冷える前に、義弘と一緒に家に入ってな」
「はーい」
「じゃ、お言葉に甘えてお任せするよ。親父」
「ああ。お前も、長い渋滞をかき分けて来て疲れたろ。家にいる間は、飯と風呂と寝床の心配はしなくていいから、しっかり体を休めるんだぞ」
「そうするよ。ありがとう」
雲の切れ間から差す月の明かりを頼りに、俺とミオを気遣ってくれた親父が、ろうそくと風防、そして遊び終え、水に漬け込まれた花火入りのバケツを、黙々と片付けていく。
その背中は、俺がまだミオと同い年くらいの少年時代に何度も見た、頼もしい背中のままだった。
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