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46.花火で遊ぼう!(45)
「ねぇ、お兄ちゃん」
縁側に上がり、お袋が用意してくれておいた庭用のサンダルを並べ終えると、何か聞きたそうにしていたミオが、俺の顔色を伺いながら口を開いた。
「ん? 何だい?」
「えっと……バケツのお水に漬けた花火って、ゴミとして捨てるんだよね?」
「うん。そうだけど、何か気になるとこがあった?」
「あのね。ボクたち、明日も花火で遊ぶでしょ? だから今度は遊ぶだけじゃなくて、後始末もボクがやらなきゃって思ったの」
「ああ、そのことを考えてたのか。ミオは律儀だね」
「そんなことないよー」
そう言って、申し訳なさそうな顔で謙遜するところがまた、慎み深いんだよなぁ、この子は。
ミオを実家に連れてきたのは、顔合わせと同時に、目一杯もてなして、のどかな田舎で、スローライフを満喫してもらうのが目的だったのに、花火の後始末まで申し出てくるとは。
もっとも、過保護のあまり、ものを知らない子供に育ててしまうのは本人のタメにならないし、それを理由に俺が里親として失格の烙印を押された場合、二人が離れ離れになってしまうおそれがある。
そういう背景を知っているのかどうかは分からないが、とにかくミオが、自主的に花火の後始末をしたいと申し出たのは、自分が育てられてきた施設による教育の賜物なのだろう。
これは花火に限った話ではない。そのおもちゃが何であろうと、遊び終わった後は、キチンと片付ける。
その片付けの知識やノウハウを身に付けさせるという意味でも、明日の花火では、自ら手を挙げたミオに、後始末の経験を積ませた方がいいだろう。
片付けをする事は、すなわち次に遊ぶための準備をする事でもあるわけだからね。
「じゃあ、花火とか、着火する道具なんかの後片付けの方法は、あとで教えてあげるとして。まずは洗面所で、火薬の臭いが落ちるまで、綺麗に手を洗おうね」
「はーい!」
ミオは、いつも通りの明るい笑顔で答え、元気いっぱいに右手を上げた。
初めて俺の実家を訪れるに当たり、思わぬロングドライブになって疲れただろうと気遣ったのだが、昼寝をして、うまい飯を食べた事で、それもすっかり癒えたらしい。
まだ二十七歳の俺が言うのも何だが、若いって良いことだなぁ。
俺も子供の頃は、夏休みはほぼ毎日、夕方の町内放送が鳴り響くまで遊び倒していたし、きっとバイタリティが無尽蔵だったんだろうな。
せっかくミオを田舎まで連れて来たんだし、明日は昼飯を食ったら、ちょっと足を伸ばして、二人っきりで街にでも繰り出してみようかね。
たまには、自由きままな街ぶらデートもいいもんだろ。
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