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47.ひと騒動(7)

「正確に言うと、〝赤ニキビ〟という種類なのよね。ミオちゃんの事だから、体はいつも清潔にしているとは思うんだけど、原因は毛穴の詰まりだったりするから、予防が難しいのよ」  話の内容が分からないのか、あるいは聞き取れなかったのかも知れないが、ともかく、ミオはこちらに向き直るや、俺とお袋の顔をキョロキョロと見比べ始めた。 「お兄ちゃん。ボク、体のどこかが悪いの?」 「い、いや、違うんだ。小さなニキビができてるだけだから、心配はいらないよ」  自身の健康状態について抱きかけた不安を取り除くために、腰を上げた俺は、ミオに柔らかな笑みを向け、いつものように、頭をナデナデする。  すると、大好きな彼氏に頭を撫でられた事で、いつもの甘えんぼうスイッチが入ったミオは、俺に抱きつくや否や、夢中で頬ずりを始めた。  で、その様子を羨ましそうに見ていたのが、親父とお袋だ。きっと、自分たちもこんな風に、孫であるミオに甘えられたいのだろう。 「じゃあお袋、そこが完全な赤ニキビになる前に、ミオを皮膚科に連れて行った方がいいよな?」 「普通はそうした方がいいけど、お盆の間は、お医者さんも休みでしょ」 「ぐ。そうだった。一体どうすれば……」 「そんなに悲観する事じゃないわよ、義弘。うちの救急箱には、赤ニキビを鎮める塗り薬も置いてあるんだから」  お袋の口から飛び出した言葉は、行き詰まったと思い込んで、頭を抱えそうな俺を安心させるには充分な朗報だった。 「さあさあ。男の人たちは、あっちでテレビでも見ててちょうだい。ミオちゃんの太ももには、わたしが薬を塗ってあげるわね」  薬を塗る部位が内ももなだけに、男である俺と親父は担当から外されたようだが、塗られる立場のミオも、れっきとした男の子なんだよなぁ。  これはつまり、恋人同士の俺たちをよく知るお袋すらも錯覚を起こすほど、ミオが女性的な魅力を放っているという事なんだろうが、どうも釈然としない。  親父はともかくとして、ミオの里親であり、彼氏でもある俺には、塗ってあげる権利はあるでしょうよ。 「はい、これで大丈夫よ、ミオちゃん。少しはモヤモヤが晴れそう?」 「んー? お薬を塗ってもらったばかりだから、まだモヤモヤの感じは残ってるけど、痛くはないよ」  お袋に追い払われ、仕方なく、テレビの前に据え置かれたソファーに腰掛け、報道番組を見ていた俺と親父にも、ミオの言葉が耳に入ってきた。  一時はどうなる事かと狼狽してしまったが、この分なら、ミオの美脚が深刻な事態に陥る心配はなさそうだ。

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