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48.ショタっ娘とスローライフ(4)
「大丈夫だよー。ボクが施設にいた時も、毎日、お昼ご飯と一緒に、小さなパックの牛乳を飲んでたけど、何ともなかったの」
「そうか。ならミオくんも、乳糖不耐症 の心配はなさそうだな」
「え? 『ニュー豆腐大賞』……?」
突然、耳にした事のない言葉が親父の口から飛び出したものだからか、ミオは首を傾げ、困ったような顔で聞き返した。
そんなミオによる、乳糖不耐症に対する不思議な抑揚の付け方から分析するに、おそらくこの子は、豆腐が何やらの栄誉に与 った話をされたと勘違いしているようだ。
ついさっきまで、体質によっては牛乳でお腹を壊すという話をしていたのに、話題が唐突に豆腐へと移ったと思い込んだあまり、どう返事をしていいのか困惑したんだろう。
「えーとな。ミオは平気だから違うと思うけど、中には牛乳を飲んでお腹が痛くなったり、ゆるくなったりする子がいるんだ。で、その症状に乳糖不耐症って名前が付けられたってわけさ」
「そうなの?」
「うん。乳糖不耐症の乳は牛乳の事で、乳糖は、牛乳に含まれる糖分……つまり甘いものって事だな」
「よく分かんないけど、その甘いもののせいで、お腹が痛くなったりする人がいるの?」
「まぁ簡単に言うとそういう事だね。個人の体質によるんだけど、体の中にある小腸が、吸収する乳糖を分解できない場合、お腹の痛みとか吐き気やらで、体調を崩しちゃうんだよ」
「ふーん。牛乳を飲むのも大変なんだね」
という返事を聞くに、ミオも乳糖不耐症について理解はしてくれたようだが、できるだけ噛み砕いた説明をしたつもりでも、ついつい話が長くなってしまうな。
厳密には、小腸から分泌される酵素のラクターゼ不足により乳糖が分解・吸収できない事で腹痛などを起こすのだけれど、あまり聞き慣れない用語を並べても、ミオの頭がこんがらがるだけだし、今から朝ご飯を食べる時に、手を止めてまで聞かせる話でもない。
何より、ミオ本人が牛乳は平気だと言うのだから、俺たちがこれ以上気にかけても仕方ないだろう。
「ささ。牛乳にまつわる話はこのくらいにして、冷める前にご飯を食べちゃおう」
「そだね。いただきまーす」
ミオは元気よく手を合わせた後、カリカリに焼き上がったトーストを両手で持ち、火傷に気をつけながら、耳の部分を少しずつ食べ進めていく。
「お。マーマレードジャムが塗られたトーストか。懐かしいなぁ」
「パンはサクサクしてるし、ジャムも甘くておいしいねー」
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