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48.ショタっ娘とスローライフ(6)
他方の親父は、料理らしい料理は一切できないし、おにぎりを握らせても、なぜか歪 な五角形に仕上がってしまうんだよな。
まぁ、ある意味器用ではあるんだけれども、とにかく親父は、料理に関する話に参加するつもりはサラサラ無いようで、四つ折りにして、テーブルの片隅に置いた新聞に目を落としている。
かくいう俺も、手先はそんなに器用な方じゃない。それでも、ミオと一緒にアジの漬け丼を作った例はある。果たして俺は、料理の腕前に関して、どっちの遺伝子を受け継いだんだろうな。
「それで、義弘。今日はどこかへ遊びに行く予定はあるの?」
「うん。外は暑いから川遊びでもしようかと思ったけど、昨日のブヨみたいな騒ぎになるのも何だし、ちょっと迷ってるんだ」
「やめとけやめとけ。この時期に川遊びになんて行ったら、足を引っ張られるぞ」
親父は新聞の三面記事に目を通しながら、この時期の川遊びが孕んでいる危険を、この時期ならではの表現で指摘した。
「んん? 誰に足を引っ張られるの? カッパさん?」
「……え!? い、いや、さすがに河童はいないんだけど」
無邪気で純粋なミオの問いに、新聞から目を切った親父が狼狽 えながら、河童の存在を否定する。
「ミオ。親父が話した『足を引っ張られる』ってのは、昔からある言い伝えなんだよ」
「言い伝え?」
「うん。お盆には、亡くなった人の霊が海とか川に集まって、水遊びをしている人を道連れにするって言い伝えがね」
助け舟を出した俺の補足にて、とりあえずミオには、川で河童が悪さをするのではない、という事だけは理解してもらえたようだ。
幽霊の存在は信じていないミオだけど、河童は妖怪に分類されるから、ひょっとしたらいるかも知れない、という認識なのだろうか。
「ふーん。ねぇお祖父ちゃん。それってほんとのお話?」
「うっ。まぁ、これまでのお盆の期間中に、そういう事故が何件も起きたから、霊の仕業なんじゃないかなーと言われてて……」
「むー?」
言い伝えの真相について問われ、突然、歯切れが悪くなった親父の顔色を、ミオは怪訝そうな表情で疑り始めた。
「す、すまん! 実はおれも、婆ちゃんに口酸っぱく注意されてたから、ずっとその言い伝えを信じてただけで、詳しくは知らないんだ」
ふふふ。親父もやられたな。
一点の曇りもない、深みのあるブルーの瞳。そんな、ミオならではの大きく澄んだ瞳で見つめられると、その時点でジ・エンドなんだよ。
たとえ、その嘘や隠し事がどんなに些細なものであろうと、ポーカーフェイスを貫こうとも、最終的には白状するという形で暴かれてしまうんだから、不思議な眼力《めぢから》だよなぁ。
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