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48.ショタっ娘とスローライフ(9)
「まあね。学生時代は何かと運動量が多くて、体育の授業で持久走とかやらされた日は、とにかく腹が減って仕方なかったんだよ。だから帰る前に駅前に寄り道して、あらかじめ貯めておいたお小遣いで、飯を食って腹を満たしていたってわけさ」
「ふーん。じゃあ買い食いみたいな感じ?」
「どうだろう? ピザの場合はお菓子の買い食いというより、店内の席に座ってガッツリ食べてたから、一日四食だった……というのが正確じゃないかな」
「あんた、そんなに足りてなかったの?」
そう問いただしてくるお袋の口調と顔は、いかにも呆れた様子だった。お小遣いとは別に昼食代を渡していたのに、わざわざ自腹を切ってまで、寄り道して飯を食っていたなんて、女性の立場としては考えられないのだろう。
「足りてなかった」という言葉だけを切り取ってしまうと、変な受け取り方をされちゃいそうだから、あんまりミオの前で使って欲しくないんだよな。
「んな事はないよ。そもそも、毎日ピザ食ってたわけじゃないし」
俺は素っ気なく答えると、ミオに向けて、腰を折られた食生活の話に戻す。
「学校帰りに、友達と飯を食いに行くのは、一種の付き合いでもあるんだよ。その時のノリってやつでね」
「え。付き合い……?」
ま、まずい!
うっかり、ミオが敏感になるワードを口にしたせいで、浮気を疑われかねない空気が漂ってきた。
案の定、食事の手を止め、俺が言う「付き合い」の真意を追及する構えが整ったミオは、ジト目で俺の顔を見つめ始める。
「お兄ちゃん、誰と付き合ってたの?」
「い、いや違うんだ。そういう意味での付き合いじゃなくて、男友達と親睦……はちょっと違うな。より仲良くなるためであって、決して、恋愛とかじゃあないんだよ」
いつも苦心する、浮気疑惑の釈明のために、「より仲良くなる」という表現を用いたのだが、よくよく考えると釈明になってないよな。
相手が男友達だから、ってのも同じことで、現在の彼女ポジションである、ショタっ娘のミオもやっぱり男の子なので、何ら疑惑を晴らす説明にはなり得ない。
とはいえ、当時は誰とも恋愛関係になっていないことだけは最後に断言したのが効いたのか、ミオもこれ以上問い詰める気はなさそうだった。
ふう、やれやれ。親父とお袋が同じ食卓についている時だからか、探られた腹が痛くなくても、背筋にうっすら冷たいものを感じてしまう。
毎回こんな調子なので、ミオの目にはおそらく、俺という人間が、恋愛遍歴が多いモテ男のように映っているのかも知れない。
ただ、前にもほろ苦い失恋話を聞かせた時の通りで、高校生当時の俺は、そもそも恋愛対象として見てもらえなかったんだよなぁ。
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