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48.ショタっ娘とスローライフ(11)

 程よい塩味とコショウの香りが特徴的な、お袋謹製の目玉焼きをペロリと平らげたミオだが、まだ見ぬお子様ランチについては、そのボリュームが気になるらしい。  この子は普段から少食であるがゆえに、もしも食べ残しが出たら、お金を出した俺や、料理を作ってくれたコックさんに申し訳なくなり、自分を責めてしまうおそれがある。  なので、お子様ランチの分量がいかほどのものであるかをあらかじめ伝えておき、ミオに、「遠慮」という名の二の足を踏ませない事が肝要になる。 「はは、心配いらないさ。ミオくらいの幼い歳の子でも全部食べられるように、きちんと調整した分の料理を乗っけてあるからね」 「そうなんだ。じゃあ、一度食べてみたいなー」 「オーケー、今日の昼ご飯はお子様ランチで決まりだな。後は、そのランチを食べさせてくれるお店を決めれば、周辺にあるデートスポットも見て回れるだろ」 「なるほどー。お兄ちゃん、ボクには思いつかない事がいつも浮かんでくるの、すごいよね!」  今しがた、ミオは俺に「すごい」と言って褒めてくれたのだが、この言葉選びは、とても気を遣った結果だと思う。  俺たちは結婚を約束した恋人同士だから、二人の立場に上下関係は無い。それでも、十七歳という年の差に加えて、養育里親と里子という間柄でもある事を考慮したミオは、「賢い」とか「利口」みたいな、目上の人間にはご法度である褒め言葉を控えたのだろう。  俺個人としては、たとえ里親と里子の関係であっても、目上だ何だってのは気にしなくていいと思っている。  だが、児童養護施設で厳しめな教育を受けてきたうちのショタっ娘ちゃんは、その躾の成果というのか、とにかく細かい部分にまで失礼がないよう、常に気配りをしているのだった。 「それじゃ、朝ご飯を食べ終わったら、二人で一緒にお店探ししよっか」 「うんうん。どんなお子様ランチがあるのか楽しみだなー」  という、俺たち二人の会話を微笑ましく聞いていたお袋が、こんな質問をぶつけてきた。 「あなたたち、いつもこんな感じでデートの予定を決めているの?」 「んー? そうでもないよ。イカ料理の店に行く話がまとまった時は、数日前からお店探しや、食後に寄ってみたいデートスポットを調べたりで、綿密な計画を立ててたもんな」 「そだね。ご飯を食べた後は、お兄ちゃんが海に近い公園へ連れてってくれて、いっぱいおしゃべりしたんだよ」 「まぁ。手際のいいこと。いつの間にか、義弘がそんなに気が利く子に育っていたなんて、学生時代じゃ考えられない豹変ぶりだわね」

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