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48.ショタっ娘とスローライフ(12)
「そりゃあね。ミオという、世界一かわいい彼女に喜んでもらえるなら、いくらでも計画を立てるよ」
「もう、お兄ちゃんってばぁ……」
俺のお嫁さんになりたいミオは、自分が彼女になる事も厭 わない。
ただ、「かわいい」と言われるのが褒めすぎだと思っているのか、ミオはそのつど照れ笑いを浮かべては、俺の腕を肘で軽く小突いたり、抱きついてきて顔をうずめ、ほんのり赤く染まった顔を隠しにかかるのであった。
「あらあら。あなたたち、こんな時まで見せつけてくれちゃって、ほんとに仲が良いのね。ごちそうさま」
親父とお袋が同席する食卓で、ちょろっとばかしノロケてしまったが、まぁ、これもいい機会だろ。いつもこんな感じで、「ショタっ娘のいる生活」を送っているんだって雰囲気だけは、親父たちには伝わったと思う。
*
「で、どこに行くのか決まったの?」
最低限の化粧と、よそ行きの着替えを済ませたお袋が、朝の作戦会議を終えたばかりの俺たちに尋ねてきた。
「うん。今日は駅前には行くんだけど、繁華街の方を避けて、道路を挟んだ向かい側にある、アーケード街に行こうって話でまとまったんだ」
「アーケード街? 確かに、あっちなら混み合う心配は無いわね」
「だろ? アーケード街の情報をスマートフォンで調べてたんだけど、ちょうどお子様ランチを作ってるお店もあってね」
「今日はお兄ちゃんと一緒に、〝マチブラ〟をする事に決まったんだよー」
「マチブラ? ああ、〝街ブラ〟の事ね」
街ブラが何なのか知らないミオの、独特な抑揚のつけ方に違和感を覚えたお袋は、一瞬、別の意味でマチブラという言葉があるのかと錯覚したようだ。
「ミオちゃん、楽しんで来てね。お祖母ちゃんたちは、ミオちゃんの写真を現像しに行ってくるから、晩ご飯までには帰って来るのよ」
「え? お袋、ひょっとして、それだけのために化粧したの?」
「なわけないでしょ。スーパーにも寄って、ご飯のおかずを作るための食材を買いに行くのよ。お母さんが無理を言って、あなたたちの滞在を伸ばしてもらったんだから、おいしいものを食べさせてあげないとね」
「はは。何だか悪いね、飯の手配まで全部お任せしちゃって」
「そんな事は気にしなくていいのよ。あなたたちの元気な顔を長く見られるんだし、何だったら、いつまででも居て欲しいくらいなんだから」
おそらく、今のお袋の言葉で胸を打たれたのだろう。ミオがその大きな瞳を若干潤ませながら、俺のシャツの裾をキュウと引っ張っている。
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