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48.ショタっ娘とスローライフ(15)

 そもそも車の運転中において、無事故無違反の安全を確保するためには、「たぶん○○」とたかをくくったり、思い込んだりする事は厳禁である。  教習所や免許更新の講習においても、最もやってはいけない行為の代表として、「だろう運転」という忌まわしい名前を付けられている。  そんな「だろう運転」と対極をなすのが「かも知れない運転」という考え方で、先ほどミオに説明したのもその一環だ。  自らの過失も含めて事故を起こさないためには、例えば(もしかしたら、相手が信号を無視して突っ込んで来るかも知れない)というように、危険を予測して、慎重な運転を心がけることが大切なのである。  つまり。いかに空いた道路だからといっても、運転中によそ見をして、隣に座っているショタっ娘ちゃんの、ショートパンツから伸びる美脚に、気を取られたりするのは(もっ)ての外だという事だ。  別に今じゃなくても、ミオの彼氏という極上の特権がある限り、後でじっくり眺められるし。 「お兄ちゃんの例え話を聞いて思ったんだけど、その他府県から車で来た人には、この先の道路がどうなってるのか、分かってない人がいっぱいいるって事だよね」 「うん。……もっとも、今はこういう便利なモノがあってさ」  俺はそう言って、信号待ちのタイミングを活かし、車のセンタークラスターに取り付けられた、カーナビを指で示す。 「一応、何メートル先に交差点があるとか、どういう風に道がカーブを描いているのか、みたいな事は分かるんだ」 「……うーん。じゃあ、他府県ナンバーの人も、事故を起こす心配はないんじゃないの?」 「まぁ、そこが説明の難しいところなんだよな。確かに制限速度や信号の場所は教えてくれるから便利なんだけど、カーナビには知り得ない道路事情が書かれた、特殊な標識には対応していない場合があるのさ」 「特殊な標識?」 「そう。例えば極端に狭い道幅やら混み具合やらの事情で『カーナビに従わないでください』みたいなのがね。だから、走り慣れない道路をナビだけに頼ってたら、ドツボにはまるんだ」 「なるほどー。道路標識はどこでも一緒かなって思ってたけど、違うんだね」 「うん。ミオがそうだとは言わないけど、そんな感じで『どこでも一緒だろう』と思い込むのが『だろう運転』と呼ばれてて、事故の元になりやすい考え方なんだよ」 「ふーん。難しいお話だけど、何となく分かったような気がするー」  ミオがこういう返事をするのは、たいていにおいて、ある程度の理解をしたがゆえなのだが、まだ運転免許を取れない子供が、他府県ナンバーだの、だろう運転だのという話を聞かされるのは退屈だと思う。

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