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48.ショタっ娘とスローライフ(16)

 今日は、俺の生まれ育った故郷でお出かけデートをする日なんだから、お堅い話はこの辺にして、まさに今、向かっている場所に関する話題へと移ろう。 「ま、そういう点に注意しつつ、事故を起こさないよう気をつけるとして……」 「うん」 「話は変わるけど、ミオは、これから遊びに行くアーケード街って、どんなのか知ってる?」 「んーん? 分かんなーい。ボクたちがいつもお買い物をする、お店が並んだ商店街とはまた違うの?」 「お、その答えはいいセンいってるね。確かにこれから行くところも、いろんなお店が並んだ街である事は間違いないから、正式名称はアーケード商店街なんだよ」 「じゃあ、普通の商店街と違うのは何なのかなぁ。『あーけーど』が何だか分かんないけど、きっと、その言葉に意味があるんだよね」 「うん、その通りさ。まごうことなき百点満点の回答だよ。やっぱりミオは賢いねぇ」  俺はミオの洞察力に感心したがあまり、「賢い」という褒め言葉が口をついて出たわけだが、当の本人はまだ何か引っ掛かるところがあるのか、手放しでは喜べない様子だった。 「お兄ちゃんに褒めてもらえるのは嬉しいけど、ボク、『あーけーど』を知らないでしょ? だから百点満点じゃないかなぁって思って……」 「ああ、そこが引っ掛かっていたのか。確かに、地元の人が買い物をする時はよく通るし、名称としてもよく使うんだけど、単語の意味を知った上で『アーケード』と呼んでいる人は、そうそういないと思うよ」  なんて話をしていると、徐々に目的地が近くなり、それに比例して、若干道が混み合い始めた。つい先ほど、半ば強引に車線変更をしてきた前のワゴン車が他府県ナンバーだったのは、きっと偶然だろう。  運転が荒っぽい人は日本全国、津々浦々に存在するから、強引なのは他府県ナンバーならではとは言えない。悲しいけれど、俺が生まれ育った、ここ咲真(さくま)市のドライバーだって、このくらいの事は普通にやる。  かといって、他人のマナーの悪さを戒める事は、予期せぬトラブルに繋がりかねない。  だから、せめて俺だけでも、恋人のハンドルさばきに全幅の信頼を寄せる、愛しい子猫ちゃんを事故から守るために、安全を確保するための「かも知れない運転」に徹しようと思うのである。 「ミオ、『アーチ状』って分かる?」 「アーチ状?」 「こう、上に向けて弧を描くような感じで」  と言いつつ、俺は空いている左手でなだらかな山を描き、ジェスチャーを交えて、ミオにアーチが何なのかを見聞きさせた。 「道を挟んで対面するお店の真ん中に、今言ったアーチ状の屋根が張り巡らせてあるんだけどさ。そのおかげで、雨の日でも、傘をささずに歩くことができるんだよ」

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