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49.初めてのお子様ランチ(4)
「ボクはこれ買ってくるけど、お兄ちゃんは、何か探してる本はないの?」
「ん? そうだなぁ。何かあったかな……」
俺、何か探してるかな? ここには成り行きで立ち寄っただけだし、さっきまでミオが欲しがっていた本の事ばかり気にしていたから、全く考えてなかったな。
かつて心の栄養として愛読していた、たわわな胸を持つグラビアアイドルの写真集は、幼い恋人である、ミオがジェラシーを抱くので却下。
車の雑誌もなぁ。ミオと二人で過ごすだけなら、今のコンパクトカーで充分だし、特に買い替えを検討するほど年式も古くないから、これもパスかな。
あまり長く考え込みすぎると、あれよあれよという間に、昼飯の時間を迎えてしまう。ミオを待たせないためにも、ここはササッと決断する事にしよう。
「じゃ、旅行雑誌を一冊買っていこうかな。えーと……ああ、これなんかいいね。ちょうど行ってみたい場所が特集になってるし」
そう言って俺は、マガジンラックに並んでいた、有名な旅行雑誌の地方版を手に取った。
「旅行雑誌?」
「そう、旅行雑誌。ほら、浴衣を買いにデパートへ行った時、お昼ご飯を食べに行ったレストランの窓から、大きな山が見えただろ?」
「うん」
「この本は、その山にある観光名所やら何やらの情報が載ってるみたいなんだ。例えば、夜景を見下ろせる展望台の事とかさ」
「なるほどー。お兄ちゃん、ボクが言ってた夜景のお話、覚えててくれたんだね」
「そりゃあ、もちろんさ。大切な彼女との、デートの約束を忘れたりなんかしないよ」
もっとも、とある予約の関係で、ここへ行くのはまだ先の話になるんだけど、ネットには載っていない、本ならではのデートスポットの下調べをしておくのは大切な事だからね。
「ありがと、お兄ちゃん。じゃあボク、先に漫画本のお金払いに行くね」
「お、おいおい。ミオ、お金なら俺が……」
「ボクが出すからいいの! お兄ちゃんも、後からついて来てぇー」
お目当ての本が見つかって、喜びを抑えきれない様子のミオは、早く自分のものにしたい心理が働いたがゆえか、急ぎ足でレジへと向かっていった。
確かに、これまでは自分のお小遣いで買い揃えてきたんだけど、今日くらいはプレゼントしてあげたかった。それだけに、ミオを引き止められなかったのは、何だかもったいない事をしたような気になる。
と、あんまり悔やんでばかりいても仕方ないな。その分、他の面でサービスしてあげればいいんだから、とにかく気持ちを切り替えよう。
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