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49.初めてのお子様ランチ(5)
俺は、自らが選んだ旅行雑誌の会計を済ませるべく、ポケットから財布を引っ張り出しつつ、店員さんの待つレジへと向かう。
すると、先に漫画本の支払いを終えたミオが、紙のブックカバーがかけられた宝物を抱き締め、溢れんばかりの笑顔で戻ってきた。
「うふふふ。お兄ちゃん、プリティクッキーの一番新しいの、ついに買えちゃったよー」
「ほんとに嬉しそうだな。まぁ、近所の本屋が全滅だっただけに、尚更嬉しくもなるか」
「うん! お祖父ちゃんたちのお家に帰ったら、一緒に読もうね。お兄ちゃん」
「はは。じゃあ、今日の夜はこの旅行雑誌も一緒に並べて、二人で読書会を開くとするか」
という、俺の提案に大きく頷いてみせるミオは、終始まぶしい笑顔のままだった。
今日の晩ご飯を食った後は、俺たちが買った花火セットで遊び、寝るまでの時間で読書会を催す予定で決まりだ。
なかなか忙しいスケジュールだが、かわいい彼女の期待に応えられるなら、このくらいは何て事ないよな。
……それにしても。
同じ彼女でも、自分が貯めたお小遣いで欲しい本を買って、何度も読み返して楽しんでいるうちの子猫ちゃんと、目についた本を買うだけ買わせておいて、数ページをペラペラめくり、興味が湧かなきゃ即捨てていた、あの金遣いの荒い元カノとでは、こうまで物の価値観が正反対になるものかねぇ。
と、かように俺は、事あるごとにミオと元カノを、同じ「彼女」として比較するクセがあるのだが、これは別に、俺が錯乱しているからではない。
初めて遭った四年前から、ずっと恋心を抱いていたミオ自身の強い希望であり、「お兄ちゃんの彼女になりたい」という意思を尊重するため、じゃあ性別は関係なく、彼氏彼女として付き合う事にしようと決めた結果が今の関係なのだ。
ただ、顔や体つき、しぐさなどは女性寄りだけれども、ミオはれっきとした男の子だし、本人も自分の性別に異議はない。で、あるがゆえに、俺が「彼女」という扱いをしている事に違和感を覚える人も今後出てくるだろう。それくらいは、容易に想像がつく。
そういう人のための妥協案……という表現は適切ではないけれど、同性で愛し合っている人たちは、お互いの事を「恋人」や「パートナー」、あるいは「連れ合い」みたいに言い替えて紹介する事はできる。
じゃあ、俺とミオの間柄も、恋人なりパートナーなりに言い替えればいいんじゃないの? という話になるのかも知れないが、ミオの場合は状況が異なるのだ。
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