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49.初めてのお子様ランチ(6)

 お子様ランチに期待を寄せるショタっ娘のミオを彼女と呼び、彼女として愛する理由《わけ》は、ただ単純に、お互いの立場を明確にしておきたいだけではない。  あくまで彼女の先にある、になりたいという願望を持つミオの、強いアプローチに押されて覚悟を決めた俺は、段階を踏んで、まずは「柚月義弘の彼女」として付き合おう、と決めたがゆえの呼び方なのである。  女性的な面を持つミオに惹かれ、徐々に恋心を抱いて付き合うようになり、腹を据えて結婚の約束もした。で、あるがゆえに、今後はミオを彼女だと紹介する機会が増えるのだが、さすがに「俺の嫁」とまで呼ぶのは、まだ早いと思う。  何しろ俺たちの結婚式は、来年の、ミオの誕生日である六月五日に催す予定だから、その日が訪れ、幼い花嫁となるまでは、やはり彼女のままでいた方がいいだろう。  ……ん? 六月?  という事は、俺とミオの結婚式は、かの有名な〝ジューン・ブライド〟ってやつになるのか?  というかブライドって一体何だ? ジューンが六月なのは分かるんだが、ブライドが何を意味するのか、ド忘れしてしまった。  その理由は単純明快で、わたくしこと柚月義弘は、この世に生を受けて二十七年の間、恋愛にすら縁がない人生を送ってきたため、結婚にまつわる情報は一切シャットアウトしてきたのであります。  ……なーんて答えたら、さも、仕事に全てを捧げた企業戦士のように聞こるかも知れないが、ただ単純に、奥手で引っ込み思案な性格が災いして、見向きしてもらえる努力を怠ったからなんだよな。  それはともかくとして話を戻すが、ブライドの意味は忘れたけれど、似たような言葉の「ブライダル」は、学生時代から現在にかけて、ちょいちょい耳にする機会が増えたような気がする。  なぜなら、テレビCMなどでよく宣伝される、どこそこのブライダルチャーチ、みたいなフレーズをよく見聞きするからだ。  チャーチを和訳すると〝教会〟になるのは知っているので、そこからブライダルの意味を推測するに、当該の教会は、ブライダルを何とかする場所としても利用されるのだろう。  その「何とか」は、CMの内容を見れば一目瞭然なんじゃないの? と思うかも知れない。つまりはという事だ。  これでも俺は、一応文系の端くれなので、日常的に使う英語で会話を交わせるくらいの、必要最低限な語学力はある。  確かに俺はブライドの意味を忘れたし、ブライダルも何だか知らない。だが、結婚と言い表す単語でない事くらいは何となく分かるのだ。  この、喉まで出かかっている感じをもどかしく思っていると、ワクワクを抑えきれない様子のミオが、旅行雑誌の会計を終えた俺に抱きついてきた。その無邪気な甘えっぷりは、さながら子猫のごとし。

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