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49.初めてのお子様ランチ(8)
「ねぇお兄ちゃん」
「ん、何だい?」
「お兄ちゃんも子供の頃、お子様ランチを食べたことがあるの?」
「そうだなぁ。確かミオより小さかった時に、このお店や、繁華街の方にあるファミレスでも食べさせてもらった記憶はあるかな」
「ふーん。でも、ボクより小さい時って幼稚園とかでしょ。あんなにたくさんおかずが乗ってて、お腹いっぱいで食べ切れない時とかは無かったの?」
「どうだったかなぁ。当時の記憶がおぼろげだからハッキリ思い出せないけど、食べ残しはしなかったような気がするよ」
「そうなんだ。ボクとは正反対だねー」
そう話す、少食でスレンダーなミオの体重は、およそ三十二キロ。これは、全国平均である四十キロを大きく下回るので、児童養護施設で行われた身体測定では、「ちょっと痩せすぎ」だと言われたんだそうな。
でも、ショートパンツを愛用するミオの臀部や太ももは、そんなにほっそりとしているようには見えないんだよなぁ。施設にいた時の、遠足の山登りで鍛えられたからだろうか。
俺としては、抱っこやおんぶをしやすいから今の方がいいんだけど、とにかく、自分でもお子様ランチを食べ尽くせるのか否かを気にしている、食の細いミオに安心感を与えてあげよう。
「ところが、だ。ここのお子様ランチは、小さな子供たちでも残さず食べてもらえるような、お店側の配慮で分量を調整してあるんだよ。だから、たぶんミオでも全部食べられるんじゃないかな」
「そう? メニューの写真を見たら、ご飯がいっぱい乗ってたけど、お兄ちゃんがそう言ってくれるなら安心だねー」
ミオは浮気に関する話以外、基本的に俺が披露する経験談や雑学などには一切の疑惑を持たず、全面的に信頼してくれる。
かように純真無垢 なミオと話し合ったり、甘えられたりしていると、常々、警戒感を持たない子猫のようだと思う。
四年前、児童養護施設で商談がまとまったことで、喜びに満ち溢れていた俺を見て興味を示し、トコトコ歩いてやってきたミオは、まさに子猫そのものだった。
そんな子猫ちゃんとの、あの運命の出逢いが無かったら、俺は未だに、奥手で臆病な性格が災いして、ほろ苦い失恋を繰り返していた事だろう。
十七歳もの年の差はあるけれど、俺がミオを愛する気持ちに偽りはない。この子が里子で、そして何より彼女でいてくれるからこそ、俺は何かが変われたような気がするんだ。
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