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49.初めてのお子様ランチ(14)

 つまり、その膝掛けするナプキンは、指や口を拭うなどの用途として扱うのが一般的で、肉汁や油跳ねを防ぐ場合は、二つ折りの状態に乗っている膝の上から取って広げ、防御するのだと思う。  ……とは言ったものの、油が跳ねそうな状態で料理を出す格式高いお店があるのかどうか、実際のところは俺にも分からない。だから、今のナプキン防御法はただの憶測だ。  何しろ中小企業の平社員なもので、生活にこそ苦労はしていないが、やれ格付けがどうたらとかいう、高級店へ頻繁に足を運べるほど、稼ぎは大きくないのである。  よって、テーブルマナーに関しては雑誌やネットでチラッと見た程度で、さほど詳しくはない。  まれにファミレスへ行く時でも、ナイフとフォークの持ち手が左右逆だという事くらいは分かっているが、そっちの方が便利だという理由で、あえてそのままにしている。  箸を持つ方の手で肉を切って、利き手じゃない方で白飯をすくって食うのは効率的じゃないでしょ、と思うからだ。  ちなみにナプキンを首から掛けると子供扱いされ、嘲笑の的になるのだそうだが、じゃあ食事の後、使用したナプキンを畳まずに、わざと適当な形で置いて「畳むのも忘れるくらい、飯のうまさに夢中になっていた」という意思を示すマナーは子供っぽくはないのだろうか?  俺のようにひねくれた庶民に言わせれば、そういうナプキンにまつわるテーブルマナーは、最初と最後で一貫性がないような気がするのだが、とにかく首から掛けんな、と言われたら、やむを得ず従うしかないのだろう。  だが、これだけは知っておいてもらいたい。衣服の色の濃淡にかかわらず、カレーうどんを(すす)ることが、いかにハイリスクな行為であるのかという事を。  だからこそ俺は、カレーうどんを食する時は、自前のハンカチをナプキン代わりにして、首から掛けるのである。  俺個人がやり始めた事だから、あくまで個人的な意見になるが、首からハンカチを掛け、カレールーを含んだから衣服を守る防御手段が、子供じみているとは思わない。  子供だろうが大人だろうが、カレーうどんを食べる時、テーブルマナーに(のっと)って、膝の上にナプキンを置いたとしても、麺を啜る時には両手が塞がっちゃうからね。  ……とは言ったものの、まず、高級レストランでカレーうどんは出さないだろうから、テーブルマナー云々の議論にすら発展しないんだけど。 「わぁー。見て見て! お兄ちゃん」 「え? どうかした?」  鉄板からの油跳ねが落ち着き、俺の屁理屈も頭の中で一段落したころ、あらゆる角度からお子様ランチを眺めていたミオが、歓喜の声を上げた。

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