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49.初めてのお子様ランチ(15)
「ボクのお子様ランチ、エビフライが二つもあるの。メニューに載ってた写真じゃ一つだけだったのに」
「どれどれ? ……あ、確かに二尾乗ってるな。しかもそれ、割りと大きいエビじゃないか?」
「そだね。これ、バナメイエビって言うんでしょ?」
「さすがミオ、魚介類が好きなだけに、なかなか詳しいじゃないか。確かにその通りだよ」
バナメイエビはクルマエビ科だが、その強みは養殖にて数を増やせる事で、よっぽどのアクシデントでもない限り、毎年安定した数の生産量が見込める。よって、比較的安価で取引がしやすい。
だからこそ、このエビフライや海老天、ガーリックシュリンプなどといった、大衆的な料理の食材として用いられる事が多いのだろう。
極端な話をすると、高級食材である伊勢海老じゃあ、エビフライはまず作らないからね。
「でも、どうして二つあるのかな? コックさんが間違えちゃったとか?」
「いやあ、ミオがあんまりかわいいもんだから、ついついサービスしたくなったんじゃないか?」
「んー。そんなことないよぉ……」
かわいいと言われたミオは、頬をうっすらと染めながら嬉し笑いを浮かべたものの、あまり、自分の美貌に自信はないような謙遜 ぶりだった。
爽やかなブルーのショートヘアと、深いブルーの大きな瞳。二重まぶたでまつ毛は長く、鼻筋も整っている。
そして極めつけが、過去二回、俺の頬に口づけをしてくれた、薄紅 の艷やかな唇。
四年の時を経て再会した俺を始めとして、二人で訪れたあらゆる場所で、女の子と間違えられてきた、ミオの美麗な顔立ちと、女性的な色香が溢れる体つきは、同じ家で暮らす俺ですら、たまに錯覚を起こす。
そんなミオの麗しさに魅入られたコック長さんが、うちのショタっ娘ちゃんに気に入られたいと思った……かどうかは分からないが、とにかく気を回してくれた事は確かなようだ。
昔の八百屋で言うところの「奥さん美人だから、大根一本おまけしちゃうよ!」みたいなサービスなのだろう。たぶん。
「お兄ちゃん。ボク、二本も食べられないから、一本貰ってくれる?」
ミオはそう言うと、料理が乗ったプレートを回転させ、俺の方へエビフライを向ける。
「いいのかい? あまりのおいしさに、一本じゃ足りなくなっちゃうかもよ?」
「いいの。お兄ちゃんと一緒に、おいしいエビフライを食べられたら、ボク、それだけで幸せだよー」
はぁ。もう、たまんないね。まるでこの子は天使じゃん。
ミオだってエビフライは大好きな料理だろうに、彼氏と分け合って食べる方に幸せを見出すなんて、心優しいどころの話ではない。
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