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49.初めてのお子様ランチ(17)

「ぬりぬりー」  旗の立てられた、ミニサイズなオムライスの山崩しに成功したミオは、傍らの小皿に盛られているケチャップを、崩した方に塗って口に運んだ。 「おいしい! 中のご飯もチキンライスだよ、お兄ちゃん」 「へぇ。同じケチャップを使っているのに、よく分かったな」 「うん。ご飯と一緒にね、おっきな鶏肉が入ってたから、すぐ分かっちゃったんだー」  なるほど。つまり、ミオは施設にいたころ、既にオムライスの他、チキンライスも食する機会があったという事か。 「でも、大丈夫なのかなー?」 「え? 何がだい?」 「えっと。オムライスの下にチキンライスって、すごく豪勢なご飯でしょ? だからお店の人たちが……」  食事の手を止めたミオは、オムライスの下に盛り付けるご飯ものがチキンライスであった事から、とても高級な料理だという認識を抱いているらしい。  だからこそ、お子様ランチを作るレストランが、赤字覚悟でオムライスを作っているんじゃないか、と心配しているのだろう。  それにしてもミオってば、「豪勢」なんて難しい言葉、いつ覚えたんだろうな。  とにかくうちのショタっ娘ちゃんは心が優しく、お店の経営までも思いやる気遣いも持ち合わせている。まだ十歳の子供なんだから、おいしそうに食べてくれるだけでも、レストランの人は嬉しいだろうに。  もっとも、月々のお小遣いが三千円というミオの金銭感覚で考えれば、チキンライスも〝豪勢〟な部類に含まれるんだろう。 「心配しなくても大丈夫だよ。およそ二十年以上、このレストランを続けられていられるのは、ミオみたいなかわいい子が、おいしいご飯をいっぱい食べてってくれているからこそなんだからね」 「そうなの? よかったぁー」 「さ。お店の心配はその辺にして、せっかくの温かいご飯が冷める前におあがり」 「うん! 一緒にハンバーグも食べるぅー」  オムライスの頂上に立った旗を上手に残したミオは、これまた大好きな料理の一つ、ミニハンバーグを一口サイズに切り分け始めた。  一般的という言葉が適切なのかどうかは分からないが、俺がたまに通う洋食屋などで頼むオムライスにおいては、真ん中の部分を横断するようにかけられたケチャップを、スプーンの腹の部分を使い、満遍なく伸ばして食する。  その食べ方はミオも同じようで、山崩しで小分けにしたオムライス用のケチャップを、伸ばしに伸ばしてムラッ気を無くし、一口一口を嬉しそうに食べていた。  ――それにしても。  近年のオムライス事情を鑑みるに、シンプルにケチャップだけを塗るのは珍しいな。お子様ランチだからかな?

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