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49.初めてのお子様ランチ(24)

 全くの余談だが、地元の大阪でメイド喫茶に行く機会が無かった佐藤は、実物のメイドさんを目にして、感激のあまり、終始浮かれていたのを覚えている。  さらに、お気に入りのメイドさんとのツーショットでポラロイド写真を撮り、手書きメッセージを添えてもらっていたもんだから、よほど楽しかったのだろう。  それ自体は良い事なんだ。楽しい思い出を形に残そうと思って、自分が納得した上でお金を払い、お店もその金額に応じ、ツーショット写真という名の〝ファングッズ〟を提供したのだから、至極真っ当な取り引きだと言える。  ただ、そのポラロイド写真の値段は、佐藤から見せてもらったレシートによると、一枚千円だと印字されていたから驚きだ。  あくまで俺個人の意見だけど、ポラロイド写真の撮影サービスは、なかなかうまい商売だと思う。  繰り返しになるが、その写真に千円を支払う価値があると確信したからこそ、佐藤はツーショット撮影を頼んだのである。その決断に対して、第三者の人間がケチをつけるのは無粋だし、大きなお世話というものだ。  メイドさんの手書きメッセージが添えられたポラロイド写真は、デジカメのデータを印刷するような手間もかからないし、何よりすぐ手に入る。  そのお手軽さが受けたからこそ、ポラロイド写真は、来店の記念として手元に残るファングッズの中でも、とりわけ人気が高いのだろう。  アナログなインスタントカメラと、その場で現像ができるポラロイドフィルムが盛り返すきっかけになったのも、芸能人やアイドル、そしてメイド喫茶のキャストさんとの記念写真サービスによるところが大きいんじゃないだろうか。  何しろポラロイドカメラは、機械音痴な人にも扱えるくらい、操作が簡単だからね。  もっとも、最近はスマートフォンと連動するモデルがあるもんで、いよいよデジカメとの垣根が無くなりつつあるんだけれど。  そんな写真にまつわる話の締めくくりとして、うちの愛らしいショタっ娘ちゃんを被写体としてフィルムに残そうと思い立った場合、カメラマンが俺でさえあれば、何十枚、何百枚撮っても、かかる費用はフィルム代のみである。  読者モデルになる気は毛ほども無いミオの、かわいい盛りである今の姿を、恋人である俺だけが無制限に撮ってもいいというのだ。これはもはや、リーズナブルとかいう次元の話ではない。 「オムライスとハンバーグと、尻尾まで食べられるエビフライで、おいしいものがいっぱーい」  ニコニコしながら、子供が喜ぶ料理の数々をうまそうに頬張るミオを見ていて、このお店に連れて来てほんとに良かったと思う。

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