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50.銀幕デビュー(4)
だからこそ、わずか五分という〝超〟ショートフィルムが、短編という分類でこそあるものの、れっきとした映画を名乗れているのだ。
さらに言うなら、ショートショートと銘打たれた、ちょっと長めのコマーシャルほどの尺しかない作品も存在する。
つまり、お湯を注いだカップラーメンが出来上がるまでに上映が終わってしまうショートショートも、立派な映画のうちに入るのだ。
もっとも、そんな短い作品を上映したがる映画館はまず無いだろう。客の入りやグッズの売れ行きなどの興行成績が振るわなければ、次からは配給を断るだろうし、何よりお客さんが振り向いてくれない。
仮に映画チケット一枚が千八百円として、予告編よりも短いショートショートに、一体どれだけのお客さんがお金を払うのか、全く予想できないはずだ。で、あるからこそ、特別料金を設定して、安価で見られるように工夫するのだが、それでも満員になる保証はない。
ちなみに短編映画の場合、有名どころのアカデミー賞や、カンヌ国際映画祭におけるパルム・ドールなどの選考対象になるためには、決められた時間の中に収める事が要件となる。
……という話をかいつまんで、ショートショートくらいの尺にまとめて説明したのだが、ミオは今ひとつ浮かない顔をしていた。
聞けば、どうしてショートショートなどに代表される短編映画の上映時間を、テレビ番組よりも短くするのか、その理由が自分には分からないと答えたのである。
「……複雑な問題だよな。俺も詳しくは知らないんだけど、例えば、短編映画を製作する目的として、コンテストに出品するため、というのはあるんだよ」
「こんてすと?」
「そうそう、コンテスト。コンテストを短編映画に絞って日本語に訳すると、戦い、勝負、競技、競い合いなんかが一番近いニュア……表現になるかな」
「競い合い? じゃあ、コンテストは短い映画で一等を取るために競い合う、みたいな感じ?」
「うん。その解釈で概 ね合ってるよ。短めの映画を撮って、同じ部門で競い合う理由は、単純に映画の出来を評価してもらうためだけじゃあないんだ」
「んー? 映画が面白いかどうかの見せあいっこの他にも、何か目的があるの?」
「そこなんだよ。映画の出来の良し悪しを決める要素として、監督の腕が占めるウェイトが大きくてね」
「ふむふむ」
ミオが抱いた疑問を全て解決させるためには、まだ細かく説明する必要がありそうだ。
そう判断した俺はミオの手を引き、映画館に近い休憩スペースの椅子に腰掛け、上映中のポスターを横目にしながら、映画監督にまつわる話を再開した。
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