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50.銀幕デビュー(7)

「じゃあ、さっき見たポスターの映画も、コンテストに出したものなの?」 「はて、どうなんだろうな。パッと見た限りでは、よくありそうな洋画だったけど、題名はもちろん、出演者も初めて見る顔ぶれだったから、監督や俳優のタマゴが作った映画かも知れないね」 「タマゴ……まだ生まれる前ってこと?」 「うん。でも、ああして映画館に配給されていることを考えると、すでに、プロの監督としてのデビューは果たしているかもなぁ」 「ふーん。さっき見たポスターには、上映時間が三十五分って書いてあったから、プリティクッキーの一時間スペシャルより短いんだねー」  確かにその通りなのだが、ミオはテレビ番組の放送時間を比較する時、大好きなアニメの『魔法少女プリティクッキー』の放送時間を基準に語ることがままある。  いかにCMを挟むとはいえ、それでも一時間スペシャルは三十五分よりも長い。ゆえに、何ら間違った例えは出していないのだが、物差しが可愛らしいと言うか何と言うか。 「ミオ。短編映画がどんな内容なのか、興味ある?」 「うん。あのポスターじゃよく分かんなかったから、もっと詳しく知りたいなー」 「じゃあ、映画館に行ってみようか」 「んん? 建物の中に入るの?」  よほど思いもよらぬ提案だったのか、ミオが首を傾げつつ、顎に人差し指を当てて聞き返す。 「そう。映画館の中には、上映中の映画を紹介するパンフレットが置いてあるだろうからね。それを読んで、映画を見たくなったら一緒に見ようよ」 「なるほどー。映画デートができるかも知れないんだねっ」  疑問が解けて、パッと明るい顔になったミオは、俺の腕をぎゅっと抱きしめ、まだ見ぬ映画の内容に期待を寄せ始めたようだ。  だが、短編映画というのが引っかかる。尺が短ければ短いほど、制作費用が比例して安上がりになり、CGのクオリティも落ちる……というようなイメージを抱かずにはいられない。  ただ、短編映画、これ(すなわ)ち駄作、だと決めつけるのは間違っている。いたずらに尺を長くすれば名作だと思うことと本質は同じだし、一切鑑賞もせずに批判して「アホ」呼ばわりされた某映画監督と同じ(てつ)を踏むのは、とても恥ずかしい行為だと思う。  うちのかわいいミオには、そんな()じくれた大人にだけはなって欲しくないので、まだ見聞きもしないものを、頭ごなしに論評してはいけないよ、とだけ言い聞かせている。  もっとも、ミオはもともと、そんな事を言い聞かせるまでもないくらい(さと)い子だから、少なくとも、パンフレットを読んだだけで作品の出来を語ったりはしないだろう。

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