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50.銀幕デビュー(21)

 上映中の映画のPRで製作したのは分かるが、子供がショックを受けないための配慮はしてほしいよなぁ。今更な話だけど。  なんて昔話を思い出していると、俺の右隣では、ミオがあらゆる映画の予告編を、食い入るように見ていた。 「どうだい? ミオ。予告編で気になる映画は見つかった?」 「ん? んー……」  およそ十数分に及ぶ予告編の時間が終わり、映画鑑賞のマナーや、禁止事項などをコミカルに伝える映像が流れ出すと、ミオはそれを横目に見つつ、俺の問いに対して首を傾げた。 「画面の切り替わりが早いからよく分かんなかったけど、音が大きいのばっかりだね」 「まぁそうだな。映画を初めて見る人は、大体同じ感想を持つと思うよ。何しろスピーカーがたくさんあるから、余計にね」  念のため、その大音響で具合が悪くなってやしないかの確認を取ったが、ちょっと驚いた程度だと答えるミオの顔色を見る限り、特に異常はなさそうだ。  自分が、さも映画の世界にいるかのような臨場感を出すために、背後にもスピーカーが設置してある。その反面、「爆音がうるせー!」と思って順応できない人がいるのも事実であるがゆえに、ミオの体調を心配して確認を取ったわけだが、この様子なら何とか大丈夫らしい。 「ねぇねぇ、お兄ちゃん。アニメの映画ってないの? プリティクッキーとか」 「プリティクッキーか。アニメコミックも結構出てるし、そろそろ映画化の話はあってもよさそうだけどね」 「ね、お兄ちゃん。もしプリティクッキーの映画ができたら、一緒に見に行ってくれる?」 「ああ、もちろんだよ。都会の映画館には、夫婦とか恋人同士だけが座れる『カップルシート』ってのがあるから、そこでゆったり見よっか」 「恋人同士のがあるんだ! 楽しみー」  なんて話を、他のお客さんの迷惑にならないよう、小声でボソボソ続けていたら、スクリーンには会社のロゴが映し出され始めた。  洋画にはありがちな演出なので、特に驚くようなものではない。  こうして、上映直後に製作スタジオや制作会社などをロゴにして流すのは、映画だけには留まらない。ゲームにおいても、近年では国内外を問わず、大作であればあるほど、ロゴの数は多くなる。  ただゲームの場合、十数秒待たなきゃいけないのがネックになって、ゲームを遊ぶのが億劫になってきた、という意見が散見される。何でも、そのロゴ画面が飛ばせないからストレスが溜まり、しだいに遊ぶどころか、起動する事すら嫌になってしまうのだそうだ。  それはうちの子猫ちゃんでも例外ではないのか、演出つきのロゴが次々と紹介されている間、理解が追いつかない様子のミオは、終始キョトンとしていた。

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