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51.帰路にて(1)

「なぁ、ミオ」 「ん? なぁに?」 「あの映画さ、今改めて、思い返してどうだった?」  ミオとの街ブラデートが終わり、実家への帰路につく車中。俺は二人で見た、あの短編映画の感想について尋ねてみた。 「うーん……最初の方は良かったよ。お兄ちゃんも、そう思ったでしょ?」 「確かにね。あのデヴィッドっていう真面目な青年が会社を興して、大きく育て上げるまではトントン拍子だったから、余計に後半の方がな」 「だよね。ボク、あのメーザーっていうおじさんのこと、好きじゃなくなっちゃったもん」  普段はハッキリと「嫌い」なんて言わない、慈愛の精神に満ちたミオをして、〝拒絶〟と表現してもいいくらい突き放された、不動産王のメイザーおじさん。  彼は、主人公のデヴィッドがコツコツと築き上げた資産の全てを、悪知恵でもって奪い取り、さらに私腹を肥やした。なお、その行為に対する彼へのお咎めやら、報復などの描写は、劇中では一切なし。つまりは不起訴である。  五年前に封切りとなったあのロードムービーは、事前に試写会を開かなかったんだろうか?  ベトナム戦争から生還したジョン・ランボーの悲哀を描く映画、『ランボー』の第一作(原題は『First Blood』)ですら、試写会で不評だったラストシーンを撮り直したというのに。  あれじゃあ、主人公を喰らうほどのインパクトを残したメイザーに、観客が怒りや憎悪といった負の感情を抱くのも無理はないよ。 「まぁ、見ている方はモヤモヤするよな。正義らしい正義の味方も出てこなくってさ」 「うんうん。プリティクッキーなら、絶対『お菓子攻撃』でやっつけてくれるのにー」  ちなみに、ミオが今口にした『お菓子攻撃』とは、悪党の頭上に現れた亜空間から、たくさんのクッキーを降らせて身動きを取れなくし、降参させる……という、実に甘々な物量作戦である。  全くの余談だが、アニメ放送開始の直後は、大量のクッキーが降ってくる描写に対し「食べ物を粗末にするな!」とか、「食べ物で遊ぶな!」みたいな苦情を、番組ホームページの〝お問い合わせフォーム〟から寄せるおじさんが多数いたらしい。  本来は、お問い合わせフォームの項目において、性別や年齢層の申告は任意だったのだが、そういう苦情を申し立てる人に限って、全ての項目を律儀に入力していたのだそうだ。  そこでテレビ局は、全国から集まった「食べ物を――」に当たる類の苦情やお叱りの言葉を分類し、統計を取ってみたところ、最も多い年齢層が五十代から六十代で、いずれも男性だったとの事である。

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