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52.夏の終わりに(12)

「だけど?」 「そこから先は俺が引き継ぐよ。ミオが集めているコミックは毎月出るわけじゃないし、駄菓子屋やコンビニに寄って、買い食いしたりする子でもないのは知ってるだろ?」 「しっかり覚えてるわよ、ミオちゃんが少食だからってお話よね?」 「うん。だから現状は、喉から手が出るほど欲しいおもちゃとかグッズがいつ出てもいいように、コツコツと貯金しているのさ」  うまく言い表せない自分の代わりに、お小遣いの使い道を詳しく説明してもらったミオは、改めて俺の腕に抱きつき、そっと頬を寄せた。たぶんこの子なりに、感謝の意を示しているのだろう。  ミオ自身が異論を挟まなかったから合っているのだとは思うが、さほど物欲を示さないのはさっき話した通りで、もし発売されても、貯金をはたいて買うのかどうかは分からない。 「ええ。その話も、さっき聞いた事とだいたい一緒の内容だったわね。ところで、お母さんはこの間、テレビ番組でお小遣いのアンケートを見たんだけど。ミオちゃんの歳くらいの子だったら――」  とまで話し、ハッと気がついたお袋が口をつぐんだ。察するに、テレビ番組の企画か何かで、ミオと同い年くらいの子に、毎月いくらお小遣いを貰っているのか? という統計を取ったことを思い出し、うっかり金額を明かしそうになったのだろう。  その統計によるお小遣いの平均額を明かしてしまうと、ますますミオが貰いすぎている、と自省するおそれがある。つまりお袋は、十歳前後の現代っ子が、ミオよりも少ない額のお小遣いを貰っているという結果を目にしたわけだ。  別に苦言を呈するつもりはないけど、こういう統計を取って、一体何の意味があるのかねぇ。  仮に、月ごとに渡すお小遣いの平均額が我が子よりも少なかったら、その平均額に合わせて差っ引くのか? 家電量販店の値引きじゃあるまいし。 「ボクくらいの子だったら?」 「あ、いや。何でもない……は間違いだけど、ミオちゃんのように、お小遣いを貯金に回す子は結構いるって話だったわね、って伝えたかったのよ」  急場しのぎとしてはまあまあだな、お袋。その慌てようから推し測ると、俺の見立て通り、同年齢の子らが貰う小遣いは、ミオよりも少ないという結果が出たのだろう。  出たからどうなんだよ? とは言いたくなるけども、テレビ番組の集計が全てではないし、毎月三千円あげているお小遣いの金額を変えるつもりもない。よって、これ以上その件に触れるのは時間の無駄だ。話題を変えよう。 「お小遣いの件はともかく。今日のデートでしていた話で決まったのはさ、ミオにもスマートフォンを持たせてあげる事なんだよ。な、ミオ」 「うんうん。お兄ちゃんとボクがずっと繋がっていられるからって、〝きっずすまほを〟買ってくれる事になったの」

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