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52.夏の終わりに(43)

「頼んだぞ、義弘。おれと母ちゃんは、お前とミオくんの覚悟を信じてるからな。ただよ、二人の前に立ちはだかる壁は、とてつもなく大きくて、頑丈なモノかも知れねぇ」 「うん。確かにそうだな……」 「だけどよ、二人にはその壁を突き破る力があると思ってるんだ。たとえ社会が認めなくても、そんな社会に白旗を揚げる必要はねえ。多数派が常に正しいなんて発想は、ただのにしか過ぎねぇ時もあるんだからな」 「お母さんも同じ意見よ、義弘。あなたたちが四年ぶりに逢ったのは、きっと、そこに意味があるからだと思うの。この先、辛い試練が待ち受けているかも知れないけれど、あなたたちなら、きっとたどり着ける。その答えを、いつか、わたしたちに見せてちょうだいね」  親父とお袋による、暖かいエールを送られた俺は、いつの間にか、その目から涙をこぼしていた。……不思議だな、ミオの前では絶対に泣かない! と、心に決めていたのに。 「ありがとう。。俺とミオは、絶対に乗り越えてみせるよ」  この場で唯一、ミオだけが最後まで涙を見せなかった。いつもは泣き虫だけど、孫として明るく振る舞い、祖父母に甘え続ける事で、俺たちの心を癒やしてくれたんだと思う。つくづく優しい子だよ、うちの自慢のショタっ娘ちゃんは。  ――こうして、俺とミオによる、実家への帰省が終わった。  たった二日間の帰省だけど、良い事と悪い事がたくさん詰め込まれた、忙しい二日間だったように思う。  ただ、各々が心の内を明かした事によって、憑き物が落ちたのか、胸のつかえが取れたのか、とにかくお別れの時は、四人全員が笑顔だった。  これが最後じゃない。ここからが始まりなんだ。俺は、俺とミオの決断を後押ししてくれた親父とお袋に、最高で最良の結果を見せてあげたい。それこそが、我が子である俺だけにこそできる親孝行なんだ。  その結果への道のりで立ち塞がる障害を取り除くため、まずは元カノである未玲とのケリをつけるべく行動を起こし、証拠品集めに奔走(ほんそう)した。  時は流れてもう九月。二学期を迎えたミオは、少しだけ日焼けこそしたものの、いつも通りな明るいまんまの元気っ子だ。先日終えた、半ドンで帰れる小学校の全校集会を経て、学び、遊び、クラスメートとの親交を深める充実した日々を送っている。  ミオ本人は、転入した一学期のような、お客様として迎えられる、大げさな扱いじゃなくなった事が嬉しいらしい。  そんなミオを心配させまいと思い、勝負をかけようと心に決めた日。俺は突然、何のアポも無しに会社までやって来た未玲の弁護士から、とある提案をもちかけられた。 「ねえ柚月(ゆづき)さん、当職はこう思うんです。このようにして職場でしかお会いできない以上、とてもじゃないですが証言などは――」

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