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53.悪女の味方(2)

 こういうダメ出しを食らうたびに思うんだが、佐藤は一体、女の子の何をどこまで知り尽くしているんだ? 今回の脂質に関しても、さも女心を察しているような口ぶりだったけど、その自信の源が何なのか、そっちの方が気になる。 「よう頭に叩き込んどけよ、柚月。うら若き乙女たちが、ダイエット中に和菓子を食らうのも『あたり前田のクラッカー』っちゅうやつやねんで」  また古いネタを持ち出してきたな、こいつ。俺らが生まれる前に流行った時代劇風コメディ番組、『てなもんや三度笠(さんどがさ)』の劇中宣伝を二十七歳の身空(みそら)で知っているのは大したもんだけど、クラッカーは洋菓子だぞ。 「なるほどな。じゃあ、それを踏まえた上でお前に聞くけど、この間、特売で大量に買ってきたミニチョコケーキはどうなるんだ? うちの女の子らは、欲望全開で三つ、四つくらいは平気で食ってたよな。あれは和菓子じゃないだろ」 「え? そら、あれや。チョコにはカカオが……」 「カカオが何だ? あのケーキにはカカオのカの字も無かったじゃないか。チョコケーキのカロリーやら何やらを考慮した上で、なお女性受けが良かったのは、単純に、たくさん食べちゃうほどの美味だったからこそではないのかね? 佐藤くんよ」 「ぐっ。おい柚月よ、お前、理詰めでオレを追い込むのはやめてくれや。女の子だって、たまにはカロリーやら脂質やらを忘れたい時があんねんやからよ」  俺には女っ気が無いから、女心に(うと)いのはたぶん事実なんだろう。それはそれとして、どうして佐藤は、食欲に対する女性の心理を代弁してまで(かば)い立てするんだ?  もしかして佐藤は、過去にフラれ倒した苦い経験の積み重ねで知り得た「女心」という教訓を共有してくれているんだろうか。 「とにかく、や。あのチョコケーキは特売の日にこそ手を伸ばせる代物なんやさけぇ、山田さんもここぞとばかりに買うてきたんやろ。お前はお前で、余った分がミオちゃんへのいい土産にもなったって言うてたし、チョコが好きなんは男女共通やねんて」 「確かにそうだな。ただ、ミオは少食だから、『二人で一緒に食べよ!』って言ってくれてさ。おかげで土曜の休日は楽しいおやつタイムになったよ」 「優しいのう、ミオちゃんは。そんな風に、自分以外の人を思いやれる性格を持った子こそ、彼女としては最高なんやけどな」  という佐藤の発言に一瞬ドキッとしたが、俺がショタっ娘ちゃんのミオと付き合っている事は、帰省の折に打ち明けた両親以外は知らないはずだ。  たぶん佐藤は、自分の彼女となる女性の理想像……みたいな意味合いで、慈愛に満ち溢れるミオのような優しい心を持っていて欲しい、という願望を述べただけなんだと思う。

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